バイデン新大統領の政策 特に財政政策について

<アメリカの新大統領> ジョー・バイデンがアメリカの大統領になって協調路線を強調した就任演説を行った。その中でアメリカの中間層を立て直すこと、オバマケアを引き継いだ医療制度を作ること、などを述べている。また、外交面では国際社会と強調することを前面に打ち出している。 いくつかの危惧がある。 主な政策のいくつかを取り上げてみよう。 ①  予算拡大。 ② 最低賃金を、時給7.25ドルから15ドルに引き上げること ③ 医療保険制度の完成 ④ パリ協定、WHO,TPPなどへの復帰、イラン核合意復帰、などの政策を打ち出している。 ⑤ 不法移民取り締まりの緩和 ここでは、財政の出動に関して見ておきたい。 【コロナの財政出動】  コロナで巨額の財政出動をしている。トランプ政権から合計で6兆ドル弱になる。1月14日発表の追加分が1.9兆ドルである。200兆円相当というというのは、極端な財政出動である。それで効果があるかどうかが問題である。支援とか給付とかよりも、コロナの抑え込みをまずする必要がある。人の接触を避けるということでまずコロナを抑えてそのあと民間の力で経済立て直しを図ることである。失業対策と支援は必要であるが、過度になると財政危機をもたらすだけである。  1.9兆ドル(約200兆円)の対策の内容は、  1)直接の給付: 一人当たりさらに1400ドルを支給する(約14万5000円)。現金給付は2020年3月に1200ドル、12月に600ドル行っている。  2)失業給付の積み増し  3)ワクチン配布:4000億ドル  4)州・地方政府への支援:3500億ドル  5)中小企業対策:500憶ドル  問題は、泥縄の対策ではないだろうか。蜜を避けて、ロックダウンをきっちりすれば抑えることができている。それをやらないで「人の意思を尊重する」とかして、マスクもしない、集会もやるというトランプ大統領の方針が感染者を爆発に爆発を重ねさせて、それでひどい状態に陥った人に救援のための財政出動をする、といった後手後手の対応を続けた。その延長線上に、バイデン氏が大統領となった。まずコロナ対策をすると言って、どのように抑えるかということが明確に出ていない。蜜を避ける政策が欠如している。ワクチンに頼るしかないので時間がかかりそれまでの拡大は防げない。<蜜を避ける⇒ワクチンでコロナを消滅させる>という対策が同時に必要ではないだろうか。  支援から始めては、被害は減少できない。支援は補助的措置として必要であるが、出発点に問題がある。まず、感染者を抑え込むということが出発点にすることが、人々と、社会と経済を救うことになる。 さらに、危険なのは、多額の財政出動によって財政危機が起こることである。アメリカの経済学者の中には、財政出動は危機をもたらさないという学者がシムズ理論をはじめ多い。しかし、財政は財政政策の硬直化をもたらすのは間違いないし、インフレの可能性も出てくるし、将来の財政健全化のための負担もやってくることは間違いない。  とるべき対策は、蜜を避けてコロナの感染を防ぐこと、そのための支払い停止などの所得政策を超短期で、臨時立法で、実現することで、コロナは抑え込めるのである。財政出動はごくわずかで済む。経済も冷えこまない。(私の提案を見てほしい。それで日本でもアメリカでも、コロナは抑えられる。) 【アメリカの財政の状況】  法人税の減税は、トランプ政権と同じ方針である。支出は、トランプ政権と違って大盤振る舞いしている。財政危機は避けられなくなる。国債の増発、売上税の導入は避けられなくなる。財政がひっ迫する。  アメリカ財政の状況を見ておかなければならない。2月11日に米議会予算局(CBO)が出した見通しで、アメリカの2021年度会計の財政赤字は2兆2580億ドル(約240兆円になる。1月に発表された1.9兆ドルは含まれていない。連邦予算残高が、28.5兆ドル(約3000兆円)となり国内生産(GDP)比で130%になる。バイデン政権は社会保障の充実をうたっており、また、世界の計策の役割にも積極的であるので、医療保険など社会保障や防衛費を削ることはできない。CBOは、長期金利を1.5%と見ている。その低く見積もられた金利でも予算のうち利払い費は7990憶ドルにのぼる。財政の億直化は避けられない。バイデン政権の政策実行に赤信号がともる。特に、中国との関係で強硬な措置をとれなくなるとアメリカの世界でのスタンスが危うくなる。  頼みの綱が金利ゼロの金融緩和政策である。1%の金利上昇で国債などの金利上昇が10年間で2兆ドル(210兆円)膨らむ。  アメリカは、1986年に法人税を46%から34%に引き下げている。そして、2017年に35%から15%に引き下げる方針を公表している。所得税の税制区分も3つ(10%、25%、35%)に簡素化する。金融資本主義時代の社会システムの根本は、法人税と所得税を中心とした税制体系であるが、独占資本主義の崩壊、即ち「金融革命」によってその税制が崩壊しようとしている。国家の基礎が失われようとしているとも言えそうである。  バイデン政権は、税収不足に2つの対策をしようとしている。一つは法人税の28%への引き上げである。トランプ政権は15%の方針を出したものの実際の引き下げは、21%であった。それを28%にする。もう一つは「ミニマム税」の導入の検討をしている。日本も法人税の抜け穴を埋めることで巨額の税収を得られることができる。例えばソフトバンクなどはほとんど法人税を払っていない。アメリカでは、アマゾン・ドット・コムは2018年の法人税はゼロである。これは抜け穴を改正するのが本筋であるが、時間がかかり難しい課題が多そうである。そこで、とりあえず、ミニマム税を導入するという案である。ミニマム税というのは、純利益の最低15%を一律納入するという仕組みである。この2つの政策で、財政危機は当面しのげる見込みあああるが、いずれにしても支出を抑えないと、財政硬直化、インフレ、さらにデフォルトの可能性、政府の信用低下などの危機が訪れる。

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