プーチン政権とナワリヌイ氏の毒殺未遂

ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏をプーチン政権は毒殺しようとしたとされている。氏は、療養先のドイツから、1月17日にロシアに帰国し、拘留された。その後、裁判で有罪判決を受けた。氏は、2014年に横領罪で3年半の執行猶予付き禁固刑の有罪判決を受けていた。今回の裁判はそれを実刑に切り替える申し立てをしている。ナワリヌイ氏は、この罪は政治的意図に基づくでっち上げだと主張している。欧州人権裁判所は2017年の有罪判決には根拠がないとしている。1月23日にはナワリヌイ氏の開放を求めて、モスクワで4万人のデモ起こっている。3300人が拘束されている。  猛毒の神経剤で毒殺を図ったとして欧州連合は対ロシア制裁に踏み切っている。プーチン政権の国際的な信用にかかわる出来事である。多くのロシア市民が大きなデモで「自由を!」と唱え、民主主義を求めている。過去に2014年2月27日、反プーチンの活動をしていた、ネムツォフ元第一副首相が射殺されている。ネムツォフ氏は、2011年に「プーチンなきロシアを」と唱え大規模なデモを組織して民主化運動を展開していた。  では、ナワリヌイ氏の反プーチンの主張は何であった。 1. 政権幹部と財閥の腐敗の批判である。 2.対外的な戦争をやめて、国内経済に集中すること 3.医療保障、教育、年金制度を整えること などである。 第一に: 石油関連企業と政権の癒着はたびたび指摘されている。ナリヌワイ氏は、ブロガーとして批判的な活躍し、多くに支持者を集めている。 プーチン政権は、2000年ごろから20年にわたってロシアに安定をもたらしてきたということが高い支持率を獲得してきた。特に2001年に、一律13%のフラット税の導入で、脱税が減り、投資を活発化し、闇経済とマフィアを一掃している。その手腕が高く評価されてきた。 第二に: ロシアの課題は、経済的停滞を打開することである。ロシア経済は、石油依存になっている。石油価格が下落すると経済はたちまち疲弊する。2014年には石油の国際価格が暴落した。その結果、金利は上昇し、ルーブルの為替レートは暴落し、物価は高騰した。石油のみに依存したロシア経済のひ弱さである。たとえは、中国の経済発展は、1978年以降の鄧小平による改革開放路線が経済発展に結びついた。積極的な経済特区を活用した外資の導入が大きな効果を生んでいる。中国に騙された、特許侵害、など、多くの批判を帯びながら、中国は経済強国になってきている。それと対比すると、ロシアは石油依存以外の経済成長が極めて低い。 EUと距離を置く政策も低迷につながっている。世界は経済発展が始まっている国が多い。かつてのNIESと呼ばれた国々に続いて、ASEAN諸国の発展は目覚ましい。インドの発展も目を見張るものがある。その経済発展によって中産層が形成されてきている。とりあえず3000USドル以上の年間所得を得る階層が発生すると市場ができる。市場ができることで市民層が形成され、「市民社会」ができてくる。(とりあえず、拙著『金融革命』(創元社、「市民層の形成」p.352-p.361を参照されたい)。市民層の形成なくして国家の独立は不可能である。アラブの春の失敗もそこに原因がある。 また、プーチン政権の場合、紛争と戦争の多さも経済発展の妨げになっているといえるかもしれない。プーチン政権は民主化運動に対して敵対的な側面を持ってきた。2003年のジョージアのバラ革命、2004年のウクライナのオレンジ革命で民衆の民主主義の要求に対置している。2008年には ジョージア(グルジア)に進行している。2014年にはクリミア半島で武力衝突している。昨年8月16日にはベラルーシの抗議集会に10万人が集まっている。ベラルーシでも民衆と対置したルカシェンコ氏に対し軍事支援を視野に「助力の用意」をしている。背後に、EU化への対立と国内勢力がEUよりになる危惧がある。  民主主義と強権の対立は、ロシアでも顕著になっている。国家の在り方が根本から問い直される時期になっているといえるのではないだろうか。

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