概要 2月3月

<第一回 アメリカの新大統領> ジョー・バイデンがアメリカの大統領になって協調路線を強調した就任演説を行った。その中でアメリカの中間層を立て直すこと、などである。また、外交面では国際社会と強調することを前面に打ち出している。 主な政策は、 ① 予算拡大。 ② 最低賃金を、時給7.25ドルから15ドルに引き上げること ③ 医療保険制度の完成 ④ パリ協定、WHO,TPPなどへの復帰、イラン核合意復帰、などの政策を打ち出している。 ⑤ 不法移民取り締まりの緩和 アメリカの財政の状況がきびしい。:法人税の減税は、トランプ政権と同じ方針である。支出は、トランプ政権と違って大盤振る舞いしている。財政危機は避けられなくなる。国債の増発、売上税の導入は避けられなくなる。財政がひっ迫する。 <第二回 ミャンマー軍のクーデターと人々の民主主義への渇望>  今年、2月1日に、ミャンマー軍はクーデターを起こした。1日「非常事態宣言」が発令され、アウン・サン・スーチー国家顧問やウィン・ミン大統領を拘束した。国軍最高司令官、ミン・アウン・フラインが政権移譲を宣言している。それ以後、連日、民主化を求めるデモが、首都のネビドーをはじめ各地で起こっている。  ミャンマーには、135の民族の利害がある。また、中国との経済的関係ということが、ミャンマーの市民社会にとって大きな課題である。 ミャンマーは近代市民社会の建設への歩みをまだ、本格的に踏み出すごく初期の段階でといえる。言い換えれば、市民社会は民主主義の土台であり、それを作るに至っていない中で最後の抵抗のごとく起きたクーデターであったのである。多くの民族の存在と中国の経済支援は必ずしもミャンマーの市民社会をもたらすものとは言えない。 <第三回 香港の民主主義>  世界では、人々の民主化の動きと国家の強権の対立が顕著になっている。中国は、強権を推し進める習近平政権の姿勢が強い。昨年、6月30日に「香港国家安全維持法案」と「香港国家安全維持法」を決定した。7月1日より施行されている。それによって多くの民主化運動を行っていた人たちが拘束された。香港は不思議な制度を持った特別行政区であった。  1997年6月30日のことである。この制度の下、7月1日からイギリスから中国に返還され、中国の特別行政区となった。 香港は一種の中国の抜け穴として機能してきたと言えなくもない。そこで育った若い人々には、自由は当たり前であった。それが今回の国家安全維持法で自由ではなくなった。選挙も民主主義的な選挙とは言えない状態になった。 <第四回 プーチン政権とナワリヌイ氏の毒殺未遂>  ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏をプーチン政権は毒殺しようとしたとされている。1月23日にはナワリヌイ氏の開放を求めて、モスクワで4万人のデモ起こっている。3300人が拘束されている。  過去に2014年2月27日、反プーチンの活動をしていた、ネムツォフ元第一副首相が射殺されている。ネムツォフ氏は、2011年に「プーチンなきロシアを」と唱え大規模なデモを組織して民主化運動を展開していた。  ナワリヌイ氏の反プーチンの主張は何であった。 1. 政権幹部と財閥の腐敗の批判である。 2.対外的な戦争をやめて、国内経済に集中すること 3.医療保障、教育、年金制度を整えること などである。 <第五回 イギリスのEU離脱から1年>  英国は、欧州連合(EU)から、2020年1月31日に離脱した。2020年12月末までを離脱以降期とさだめて、スムーズな移行に努めてきた。「欧州連合」は、近代国家の枠組みを超えた新しい姿として、20世紀から21世紀にかけての新しい世界の姿を現すものであり、一面での希望と新しい人類の望ましい姿を示すと評価される事柄でもあった。しかし、一方で、試みは「失敗」したという見方も一方ではある。何のために超国家EUを作り、なぜ失敗し、今後どうなるのかということは、世界の進む道を考えるうえで不可欠な検討材料である。 <第六回 イランの核合意離脱>  2018年5月トランプ政権はイランの核合意から一方的に離脱し、イランへの制裁措置に踏み切った。イラン核合意というのは、2015年7月に結び、国連の安全保障理事会で決議された。合意内容は、イランが濃縮ウランや遠心分離機を大幅に削減し、これを国際原子力機関IAEAが確認した後、見返りとして金融制裁や原油取引制限などを緩和するというものであった。  中東地域の政治情勢にとっていくつか考慮しておくべきことがある。 1 イラン革命の意味 2 アラブの春の意義 3 武器輸出の問題 4 石油の持つ意味 などである。 まず、第一に、イラン革命は1979年に起こったのであるが、ホーメイニー氏が政権を樹立した。その原理は、 1 近代化・西洋化の否定 2 イスラーム統治体制 3 シーア派による政権 4 反米路線 等である。イスラム共和制の樹立ともいえるが、イスラム法による統治であり、西洋近代の共和制とは大きく異なる。 <第七回 米中対立>  中国とアメリカの対立はトランプ政権で先鋭化し、バイデン政権になっても鋭さを強くしている。米中関係の一つの時代が、2018年に転換したとみるべきである。  米中対立は次の4段階で捉える必要がある。 第一段階 通商問題 第二段階 技術摩擦 第三段階海洋権益・領土問題 第四段階 人権問題 これらの米中対立背景には、一つには1990年代前半のクリントン政権以来の「関与政策engagement」が2018年3月1日に終了の声明を出している。  アメリカの姿勢の変化には、「アメリカは世界の警察ではない」というオバマ大統領の声明に呼応するアメリカの世界戦略がある。それがトランプのアメリカ第一主義と重なり、バイデン政権にも引き継がれている。 <第八回 機能しない国連と強国の外交政策>  グローバル化が叫ばれる中、世界は、依然、国家でできている。グローバル化は各国の外交政策の蚊帳の外にあるといえるほどである。ミャンマーの軍のクーデター以来、市民のデモは弾圧され、3月7日現在で50人以上が殺戮され、国連の警告はなしに等しい。コロナ危機に見舞われている世界の情勢の中で、世界保健機構WHOの有効性が疑問視されている。貿易に関しても、WTOは機能不全を起こし、TPP、EPA、RCEPと多くのFTAが結ばれている。国家間の通商条約が国際的な協定を超えて進んでいる。世界の民主主義に対して、国家の強権が猛威を振るっている。  通貨問題は影を潜めているが決して安定を迎えているわけではない。IMF体制かかつてのアメリカの支配という色を薄くしているが、アメリカドル支配の世界経済にユーロと人民元がその地位を大きくしようとしている。世界の援助に関しては、経済援助が軍事援助に比べて大幅に比重を大きくしてきた。しかし、その経済援助の陰に、新たな支配の意図をみることができる。 国際連合は、無駄と不効率が目立ち始めているのではないだろうか。真剣な見直しが必要な時期が来ている。巨大な予算を使いながら、無意味な仕事をしている悪しき官僚主義に陥っているのではないだろうか、そのような疑念が提起され始めている。国連不要論につながっていっても不思議ではない。 <第九回 グローバル独占企業>  グローバル企業が活躍する時代である。転換は、1980年代であった。ビジネスの新しい形が、百花繚乱、気が遠くなるほど発生している。かつて、独占企業・財閥は国家と結びついていた。国家と企業の形も根本的に変化している。 (1)規模 新しい独占企業は、巨大企業となっている。かつて世界を支配した独占・財閥に加えて、新しい巨大企業が生まれている。 (2)新独占形態 競争は新しい形の独占による利潤形成である。特に携帯やSNSによる独占がある。会員制で会員を囲い込み、恒常的に使用を受けるものである。 (3)法人税の国際競争 20世紀の現代国家を作るものは、所得税と法人税であった。グローバル化の中で、企業は法人税の国際的な対応を模索する。 (4)国家対巨大企業 巨大企業は、時として国家と対立する。独占禁止法の行政と法人税である。近年のアリババと習近平政権との微妙な関係があった。マイクロソフトに始まり、GAFAの各社の欧米の政府による追及があった。 (5)クラウド・ネット ITを駆使した新しいシステム、特にクラウドやネット活用などで、独占的利益を得ようとする動きがある。 (6)生産部門の変化―鉄鋼業と自動車産業 鉄鋼業の衰退や自動車産業の根本的な変化、電機産業の変容などは、これまでの基幹産業は、世界の産業の状況を根本的に変える要因となっている。 <第十回 戦争の危機>  世界は戦争の危機にさらされていると言えるかもしれない。  アメリカと中国の対立がある。核心的利益=レッドラインという言葉は、「この線を超えると武力行使を辞さない」という警告である。中国は香港、台湾に対する政策を核心的利益と繰り返し唱えている。  戦争の原因は国益の対立であるが、戦争と直結するものとしては、武器製造、武器輸出、核開発、サイバー戦争の準備、宇宙戦争、世界の警察活動などであるといえる。武器供与・輸出は、世界の戦争の危険性を増大させている。  ロシアと中国とアメリカの覇権主義から世界の平和を実現するのに、アメリカの規範に基づく指導権を持って実現するという文脈では世界平和は実現がむつかしいのではないだろうか。 <第十一回 日本外交の転換の可能性>  現在の日本外交は、日米安保条約を基本路線にしている。ということはアメリカの国家政策の路線の延長線上に日本の外交がある。アメリカの外交路線の基本は、先日3月18日からの米中外相会談にみられるように、米中対立の構図の中にあり、対ロシアとの対立がもう一つの極である。そしてさらに、対イランや対北朝鮮、対シリアなどの中東地域での紛争対応という中にある。アメリカの自衛と「世界の警察」という海上支配を、NATOをはじめとする同盟国で維持するというところにある。日本の外交政策はこのような世界的な枠組みの中で決定されていかなければならない状況である。 国家は未来の世界の在り方からする時、戦争放棄はすべての国が採用しなければならない。核があり極端な軍事技術の進化の中で、国家は平和のための世界機構を構築する必然性がある。そのためには戦争放棄をすべての国家は考慮してゆく運命にある。しかし、現状では軍事力に依存している。憲法の戦争放棄という側面は、市民社会の動きを中心に進められることになるはずである。自営という軍事的要求は国家が固執することになる。今後成立する政権がこの二重の課題を果たしていかなければならない。  国連は戦争廃絶への動きをしていない。世界の軍事情勢は各国の政策にゆだねられているのが現状である。国家はこれまでの歴史で戦争の原因を作ってきた。そこから国家を超えた世界機構を創設することが今後の課題となる。国連はもともと国家の代表によって作られているので、国家利害の上に成立しているので、普遍的な超国家的な世界機構とはなりえないのである。

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