米中対立

 中国とアメリカの対立はトランプ政権で先鋭化し、バイデン政権になっても鋭さを強くしている。米中関係の一つの時代が、2018年に転換したとみるべきである。日本と中国の関係も、融和から対立の時代に入っている。それはいくつかの原因があるが、世界の大きな流れとして認識しておくことが今後の外交政策を考えるうえでも重要な大前提となってきている。  米中対立は次の4段階で捉える必要がある。 第一段階  通商問題:関税合戦、貿易構造の対立である。トランプ政権と習近平政権はお互いの関税を引き上げることで、貿易戦争に突入した。 第二段階  技術摩擦:5Gをめぐる争いで華為技術(ファーウェイ)や北京字節跳動科技(バイトダンス)の動画投稿アプリTIKTOKの米国での事業を米マイクロソフトに売却する圧力から技術輸出規制の対立に発展した。アメリカの大学院に大量に中国留学生が学んでいる。2019年度から2020年度の中国人留学生は37万人。中国で大学を卒業した人の半分以上が渡米している。この人たちが中国の発展を支えているともいえる。 第三段階 海洋権益・領土問題:  中国の海洋進出で南沙諸島をはじめ領有権の中国の強権を行使しようとしてる。尖閣諸島をめぐっての日本との対立やスカボロー諸島のフィリピンからの実効支配のはく奪、など、である。ポンペイオ国務長官は、2020年7月13日に南シナ海の中国進出を全面否定している。アメリカや周辺諸国と中国の対立は先鋭化している。中国は毛沢東の言葉で「政権は銃口から生まれる」という言葉を軍事力重視の国家政策として、国家の本質と体制を理解している。軍を強くすることは経済力を強くすることと並行して国家の基本成長戦略にしている。世界の情勢を見ても、第二次世界大戦に勝利した国々は軍事体制を継承しており、国連体制はその延長線上にある。 第四段階 人権問題: チベット問題、新疆ウイグル自治区の弾圧、香港・台湾に対する中国の強権政策などに対する批判がある。さらに、アメリカの中国共産党幹部への疑心暗鬼がある。トランプ政権とバイデン政権に共通する姿勢である。バイデン政権は中国による新疆ウイグル自治区での弾圧について「ジェノサイド(民族大量虐殺)にあたるというトランプ前大統領の主張を踏襲している。 これらの米中対立背景には、一つには1990年代前半のクリントン政権以来の「関与政策engagement」が2018年3月1日に終了の声明を出している。中国の国内の 1)グローバル化、2)民主化、3)第三革命というという歴史認識が中国を国際社会で歓迎するという流れがあった。中国の市民社会の形成に期待が持たれた。鄧小平の打ち出した方向性で、改革開放路線に始まり、中国共産党はその方向をすすめるという歴史認識があった。その方向性が終了したという見方へ転換するのがここ数年のことである。開かれた中国の終了、民主主義国の仲間入りという政策が終了したという認識である。1978年以来の改革開放路線の延長線上にあった近代化政策を転換し、中国中心の中華思想、習近平氏の「中国の夢」の演説、中国の覇権への転換という疑惑につながっている。  もう一つのアメリカの姿勢の変化には、「アメリカは世界の警察ではない」というオバマ大統領の声明に呼応するアメリカの世界戦略がある。それがトランプのアメリカ第一主義と重なり、バイデン政権にも引き継がれている。中国の軍事力との衝突の危険性をはらんでいる。トランプ政権もバイデン政権も基本的に、NATOを核とした同盟重視の姿勢がある。日本や韓国、台湾がNATOを補強する同盟国としての役割を期待されている。アメリカの防衛費をめぐる財政問題も関連している。トランプ大統領は米軍の駐留費の肩代わりを駐留先の日本、ドイツ、韓国に求めた。米国防衛は役6000憶ドルである。日本は約500億ドル、中国は2500億ドルである。 以上の結果、アメリカ閣僚の中国共産党幹部への敵意演説が広がっている。2020年6月24日、オブライエン大統領補佐官は、「習近平は自分をスターリンの後継者だと思っている」と演説した。7月にレイ米連邦捜査局FBI長官、バー司法長官らも、共産党を手厳しく批判している。アメリカ政府は9000万人超の中国共産党員とその家族の入国を禁じることも検討もしている。大躍進で5000万人が死亡し、文化大革命で1000万人が粛清で殺戮された歴史と1989年の天安門事件とその隠ぺいが中国という国家と共産党の体質として根深く刻まれている。さらに、新型コロナの感染普及の隠ぺいや香港民主化の抑え込みなどに重なってきて不信につながっている。  

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