グローバル独占企業

グローバル企業が活躍する時代である。転換は、1980年代であった。ビジネスの新しい形が、百花繚乱、気が遠くなるほど発生している。かつて、独占企業・財閥は国家と結びついていた。国家と企業の形も根本的に変化している。 (1)規模 新しい独占企業は、巨大企業となっている。かつて世界を支配した独占・財閥に加えて、新しい巨大企業が生まれている。国を超える市場に進出することで、グローバルな競争を生み出し、新しい独占の形を作っている。一つは市場の大きさと国家を超えた競争である。2020年のネットフリックスの売上高は、249億9605万ドル(2兆6000億円)である。会員数は2億人を超えている。ウォルマートの2021年1月決算の売上は、5552憶ドル(58兆6600億円)である。アマゾンの2020年12月期の売上高は3860億ドル(40兆7830億円)である。ウォルマートやアマゾンは、ネット通販と小売スーパーを組み合わせてきている。ウォルマートは、無人レジの開発で、先行するアマゾンに対抗して、マイクロソフトと提携している。財閥によるつながりがなくなり、利益があげられる企画が立てば、どの企業とも組むようになっている。日本では、「系列」や、「メインバンク」といったかつての金融資本の形態は1995年ごろに消滅している。 (2)新独占形態 競争は新しい形の独占による利潤形成である。特に携帯やSNSによる独占がある。会員制で会員を囲い込み、恒常的に使用を受けるものである。それは仮想店舗やカード制による囲い込みという手法も有力となっている。さらに、個人情報を収集することでのマーケティング活用が行われている。それが巨大な独占をもたらしている。かつての独占は、巨大固定資本と技術独占に基づいていた。そのような独占とは異質な形の独占が現在の状況である。時代と社会の生まれ変わりが生じたといえる。 (3)法人税の国際競争 20世紀の現代国家を作るものは、所得税と法人税であった。国家は税によってできて いるが、企業の側からすれば、できることなら法人税を少なくすることを画策したい。グローバル化の中で、企業は法人税の国際的な対応を模索する。法人税の網の目を潜り抜けるという行動の中で企業活動を企画する。巨大企業は、ある意味で国籍を持たない。自社にとって有利な国を選択し法人化している。企業はもはや国を代表しなくなっている。タックスヘイブンの利用もあるが、法人税の低い国に会社を設立するという対応も取っている。また、子会社の配当を無税にするという国の税制を利用して法人税を極端に少なくしているような方法も取られている。 (4)国家対巨大企業 巨大企業は、時として国家と対立する。独占禁止法の行政と法人税である。近年のアリババと習近平政権との微妙な関係があった。マイクロソフトに始まり、GAFAの各社の欧米の政府による追及があった。2018年には米グーグル側が欧州委員会を提訴している。43億ユーロの巨大制裁金に対する訴えである。欧米で排除の動きが強まるファーウェイはインドネシアなど東南アジアに働きかけを強めている。いくつかの国家がそのような巨大企業の動きに対して、法的措置に踏み出している。巨大企業は、国家の政策に対する対応も視野に入れている。巨大企業は、本質的に脱国家的であるが、国家というものを考慮せざるを得ないわけである。 (5)クラウド・ネット ITを駆使した新しいシステム、特にクラウドやネット活用などで、独占的利益を得ようとする動きがある。アマゾンは新しいCEOに創業者のジェフ・ベゾス氏に代わって、クラウド事業を立ち上げたアンディ・ジャーシー氏を据えた。アマゾンのクラウド部門のAWSはアマゾンの事業の中核になろうとしている。マイクロソフトはクラウド部門のAzure(アジュール)もマイクロソフト社の中で大きな役割を持とうとしている。マイクロソフト社の2021年の10月―12月の四半期のクラウド部門の売り上げは、430億7600万ドルである。純利益が154億6300万ドルで利益率が極めて高い。今後、競争を続ける中で利益率は低下するのではないだろうか。Dellは、ストーレッジ機器開発企業EMCコーポレーションを2015年に買収している。 (6)生産部門の変化―鉄鋼業と自動車産業 鉄鋼業の衰退や自動車産業の根本的な変化、電機産業の変容などは、これまでの基幹産業は、世界の産業の状況を根本的に変える要因となっている。 自動車産業は業種を超えた再編を迎えている。電気自動車技術と自動運転、そして自動車のAI化が変化をもたらしている。アップルカーをはじめ、グーグルが自動車生産に加わり、業界再編を起こしている。また、パナソニックなど電気産業の自動車産業とのコラボが行われている。そして中国配車アプリのディディは電気自動車の大量使用、バイドゥが電気自動車に、鴻海ホンハイが自動運転などへ進出してきている。 世界の鉄鋼産業は大きく様変わりしている。ミタルの巨大化、インド・中国の台頭。中国は2020年の粗鋼生産量が10億5300万トンである。生産過剰に世界は陥っている。価格は低下して、2014年で、1トンで560ドルまで下がっている。キロ当たり58円で水より安い。製造方法においても、CO2の排出量を減らすための水素CO2回収技術の実現には高炉法を見直さねばならない。 脱炭素と生産過剰は鉄鋼業の大きな障壁となっている。

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