現代の生産力を見よう

生産力というのは、「生産量」と「生産にかかる労力」の比率である。1トンの熱延コイルの価格が972ドルほどである。1000トン作るのに1万人の人がはたらいていたのが、1000人になると生産力は10倍になったと言える。そこに技術が絡んでくる。現在の世界の鉄鋼の生産量はトップ15社で生産の大半を占めている。価格が下がると利益が減る。しかし、生産量が2倍になっていて、労働者が10分の1地になっていれば、生産力は20倍になっているので富は20倍になっているわけである。

鉄鋼業界では、2012年10月1日に、新日鉄住金が発足した。アルミ業界でも、1位の古川スカイと2位の住友軽金属工業が2013年10月に統合し、株式会社UACJ(United Aluminum Company of Japan)になった。鉄鋼業界でもアルミ業界でも、それに次ぐ神戸製鋼は、鉄、アルミ、銅などの素材と建機などの機械と独立系発電事業の電力を柱とした多様な分野を持っている。2017年度の鉄鋼業界の売上高は、トップ15社の合計で4010億ドル、純利益181億ドルで、純利益が最も大きいのはアルセロール・ミタルの45億6800万ドルである。

<技術の多様化>  

現在の生産力構造は極めて複雑になった。20世紀初頭と比べて、人間の富の種類は飛躍的に多様化し、増えた。そして現在も増え続けている。  半導体やAIに絡んだ生産、生命工学、ロボット工学など新しい技術が新しい商品を生み出している。制御機器を製造するIDEC滝野事業所(兵庫県)加東市)は「千手観音モデル」と呼ばれるロボットを製作する。2本の腕がそれぞれ6本の手に分かれ合計26本の指を動かし小さな部品をつかみ、組み立ててゆく。100万台で24時間フル稼働させると3000万人分の労働力をまかなえる。日本の製造業の労働力をロボットに置き換えてしまう。

 

<技術=生産手段、労働力、原料>

現代は技術の発達が、IT、AI、IOTなどの発達で飛躍的に発展し変化が激しく、産業の生産力構造全体を左右している。生産は、技術と生産手段にかかわる要素、労働力、原材料という3つの要素からできている。ローテクとハイテクの混合の中で、世界の産業構造がグローバルな競争にさらされている。 バングラデシュは「世界の裁縫工場」として増大し続けている。人口1億5600万人。経済成長率6%を超えている。H&M、ZARA、ユニクロ、ウォルマートの工場がひしめき合っている。法人税5年間免除される輸出加工区が全国に8つある。最低賃金も徐々に上がってゆく。(2014.4.24) 産業素材では、鉄鋼、石油化学、繊維、紙、液化天然ガス、原油、石炭、などの価格の変化が大きな影響力を持つ。直接的には原料価格はエネルギー価格に反映する。電気料金、ガソリン価格などが影響される。労働力と原料価格が上がるとき、物価上昇が起こる。通貨の変動、経済破綻などの変動要因を小さくし、価格の安定ということが世界経済の発展にとって重要な課題である。現在の世界の生産力構造の変化は、多くのそして大きな変動要因にさらされている。変動要因としては、通貨変動、経済破綻、政治的な変動、気候やそれと関連した国家政策などがある。安定の機構を構築するという視角がグローバル化の進む中で、重点的に配慮されることが必要になっている。

<ハイテク技術と産業>

 

村田製作所は電子部品(セラミックコンデンサー)の新工場の建設を進めている。京セラもセラミック部品、太陽誘電の工場を増設し続けている。5Gや電気自動車の普及による部品の取り合いがある。スマートフォンなどのデジタル機器の完成品は、米アップルや韓国サムソン電子などが強い。コアな部品は日本メーカーの独壇場となってきている。 日立は日本のテレビ市場から撤退している。海外での販売はある程度の販売数を維持している。日立の基本方針は、IOTに傾注しながら白物家電の販売シェアを維持しようというものである。洗濯機3割、冷蔵庫3割弱 、LED照明1割強のシェアを国内で持っている。全体の売上高10兆円、営業利益8%を目標としている。  高度な電子技術に基づく製品に対し、人間に不可欠な物を商品化するようになっている。「水」である。海水をろ過し真水を作り出すプロジェクトが中国をはじめ世界で進んでいる。その心臓部には、濾過膜生産がある。東レと日東電工が受注を受けている。対抗できるのは、米ダウ・ケミカルくらいである。 水市場は、2025年度には100兆円産業の規模となり自動車産業に匹敵するといわれる。中国の農夫山泉は、ペットボトル入りの飲料水で中国市場の2割を持つ。粗利益率が55%と高い。水道水ではなく天然水を打ち出し水源地を10か所おさえている。

<サーヒスという商品>  労働が生産物を生み出す。生産物が市場や交換を通して、商品となる。その商品が、現代では物とサービスの二種類がある。サービスを生む労働が労働全体の過半になってきている。その時、生産力の形も大きく変化している。介護、観光、ビル清掃、宅配などの分野では、多くのサービス労働が必要となっている。  食品製造は、今日では従業員数で製造教最大の産業だが、労働生産性が低い。キューピーが、造材の自動盛り付けロボットを開発しようとしている。盛り付けにかかる作業員は全体の6割を占める。これをロボットに置き換える。一つの容器に盛り付ける時間は十数秒である。誤差は現在のところ10g以下である。AIを駆使し、例えば、ポテトサラダの容量を3Dで把握する。(2021.3.18)

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