税制の国際化

税制は、国家単位に出来ている。国境を越えて税を徴収することはできない。税は、その国の主権に属するものである。しかし、今、税制度に国際的な調整の波が起こっている。グローバル企業の出現やパナマ文書にみられるようなタックスヘイブンに対する批判のうねりが租税の国際化への調整制度的改革を迫るようになっている。日本の租税に関する法律も修正が必死の時期が訪れることになるものと思われる。税は、企業活動、経済活動がグローバルになるのに対応して、グローバルな課題を持つようになっているのである。

 

一つの傾向として、いくつかのグローバル企業が詳細な税務情報を公表している。開示義務のない国への納税額を記載した情報開示を行っている。ボーダフォン・グループは2015-16の納税状況を自社サイトに公表した。法人税が低いことで知られるルクセンブルグや租税回避地の利用状況を説明している。デンマークのビール会社、カールスバーグは法人税と合わせて従業員の納めた税金の合計額も明示している。2015年度に約6200億円の社会貢献をしたと報告している。スターバックスはイギリスで法人税をほとんど払っていないという批判に対し、法的義務のない約27億円の自主納付をしている。(2017.3.20 注:日付のみを記載しているのは、日本経済新聞のもので、その記事を参考にしている)

 

経済がグローバル化しても、法人税は国境の外では行使できない。特に、IT企業に関連した課税に関する問題が大きくなっている。EUはIT企業の課税に関して厳しい姿勢をとっている。欧州委員会は、米アップルに競走上、不当な優位をもたらしたとして、アイルランドに対して130億ユーロ(約1.7兆円)の税不足分の徴収をするように命令した。また、ルクセンブルクにも、米アマゾン・ドット・コムから2.5億ユーロを徴収するよう命じている。

渡辺智之氏はグローバル企業に関連した仮設例の例示している。(2017.11.2)インドのシムテムエンジニアによる業務用ソフトのデジタル財の開発と日本の顧客への販売に関する税の国際的な構造である。この活動全体をアレンジしているのが米国IT企業であると仮定する。所得税、法人税、消費税の図のような関連ができる。

 

アメリカ国内でも税の大きな問題がある。脱税額が年1兆ドルになる。大半は所得上位1%の層による。脱税を取りしまる米内歳入庁(IRS)の予算が削られ税務調査官約1万7400人が削減された。アメリカは、課税逃れの黄金時代を迎えていると言われる。アメリカの税法自体に問題がある。2020年の大手企業55社が法人税を納めていない。この55社の利益は4兆3000億円に上る。アメリカの実効税率は極めて低く法人税収入は、GDPの1%に過ぎない。OECD加盟国の平均は3.1%である。また、反面、勤労所得額控除(EITC,所得が2万ドル前後の層に対する府の所得税=給付がある。その調査にIRSの税務調査が割かれてしまっている。この層はマイナスの税(給付)ではなく、無税=無申告だけでいいのではないだろうか。また、アメリカの税法は膨大な量があり全部で約400万語にのぼる。税の単純化、行政の効率化が望まれる。(2021.4.23)

 

アメリカの闇は、医療保険制度にもある。オバマケアは、2010年3月に医療保険改革法として成立したが、その実施に関して議会で紛糾した。また、この保険制度自体が医療負担を極度に増大させる。医師の雑用を極大化するなど、根本的な矛盾を含んでいると言われている。

 

金融革命を受けて財政投融資は縮小してきたが、2018年度予算では、財政投融資を活用する動きが目立っている。グローバル化の波に国家が関連する動きに原因がある。インフラ輸出や産業競争力の効果などが狙いである。国家的な税がグローバルな作用に使用され始めている。独立行政法人や官民ファンドの活用が想定されている。国土交通省は、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構の業務範囲を拡大し、海外でのコンサル業務を加える。官民ファンドでは、国交省が所管する海外交通・都市開発事業支援機構が増額を要求し、総務省が所管する海外通信・放送・郵便事業支援機構も海外戦略を強化している。通産省関連ではクールジャパン政策の旗を振る海外需要開拓支援機構などが増額を要求している。(2017.9.5)

新型コロナ禍のもとで財政投融資計画が総額40.9兆円になっている。20年度の当初は13.2兆円であった。柱は日本政策金融公庫による25.2兆円の資金繰り支援である。医療事業者向けには、独立行政法人の福祉医療機構に1.6兆円を振り向ける。財政投融資計画が膨らんだことにはコロナと関係のない案件が多いことにも原因がある。例えば高速道を4車線に広げる事業や鉄道整備に9000億円を計上する。大学ファンドには4兆円を投じる。(2020.12.19)

政府の財政支出が適切かを検証する「独立財政機関」が欧米で存在感を増している。コロナ下で企業の資金繰りや雇用を支える財政出動に関してその使い道を財政面から精査する必要がある。アメリカ議会予算局(CBO)や英予算責任局(CBR)が有名。独立財政機関はOECD加盟36ヵ国のうち28カ国が導入している。日本はそのような組織はない。財政試算は内閣府が行っている。日本の財政は、2020年度の歳出が160兆円規模に膨らんでしまっている。(2020.11.8)日本も独立財政検査機関が必要なのではないだろうか。

また、財政の低開発国の支援は外交に利用されている。中国の対外融資が膨張している。68ヵ国に18年度末の残高は1017億ドルである。世界銀行、IMFと並んで巨額の融資を行っている。中国の融資は金利が高い平均3.5%である。一帯一路の政策と関連し鉄道や港湾の建設資金を終始し、中国国有企業が受注している。財政投資は、外交的な圧力効果にもつながっている。「債務の罠」と呼ばれる警戒感にもつながっている。(2020.8.7)

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