国連改革とウクライナ紛争の解決

世界は、今、転換点に差し掛かっている。超大国ロシアが、武力行使をしてウクライナに侵攻した。NATOという軍事同盟の枠組みと、アメリカの絶対的覇権が自国の利益と対立する世界の国際関係の中での侵攻である。ウクライナを領土と民族の問題において、ロシアは、引くことができない状況と判断して軍事侵攻に踏み切った。ヨーロッパ諸国とアメリカと日本などのアメリカの同盟国は民主主義と国連憲章による国際秩序という観点から、ロシアを非難している。

 しかし、アメリカも戦争を繰り返してきた。国連は戦争をやめさせることや紛争解決をほとんどできないままであった。国連憲章の中にも絶対的正義とは言えない矛盾した条項が多いということを反省する必要がある。ウクライナの民衆と多くの世界の人々は戦争をやめろとデモを行っている。プーチン政権は戦争に踏み切った責任はある。しかし同時に世界の体制にも問題がある。戦争しない世界体制の実現のための第一歩を踏み出すべき時期に来ている。帝国主義戦争、冷戦、アメリカの軍事的「世界の警察」などの時代原理は終焉を迎え、新しい秩序を世界平和の構築に向けて進めることができる時期が到来している。それを推し進めるのは、市民の声である。

 NATOの軍事同盟が戦争を誘発しているという側面もある。多くの論者は、NATO体制の効果、民主主義国陣営の軍事増強などを唱えている。しかし、必要なことは戦争はいらないという人々の声を新しい戦争のない世界の国際体制の構築につなげることではないだろうか。

今、必要なことは、ウクライナ問題をその場しのぎの解決に終わるのではなく、真に根本から解決することである。世界を戦争のない新しい国連憲章によって国連を改革することが必要である。核兵器の使用ということを外交手段にするような論議が生じている。このような現状を一掃し、核を排除する世界体制を作り、武器輸出の規制を国連が関与する制度を確立することである。軍事同盟に世界の安全保障を依存するのではなく、国連という世界共通の組織において世界の各国の安全保障の体制を作る契機として、ウクライナ紛争を解決できれば、この戦争の人類にとっての意義は大きいものとなる。世界の民衆、市民の戦争をなくすという声が世界を動かす原動力となる。

1<ロシアのウクライナ侵攻と事態の流れ>

 侵攻開始

 2月24日、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった。外交努力は実らなかった。サイバー攻撃にはじまり、空爆となり、そして地上部隊の進出が、ベラルーシ側、ミンスクなど東部、そして南のクリミヤの3方向から始まった。2日目に入り、ウクライナ軍の抵抗が目立つようになってきた。当初、ウクライナはドネスク州とルガンスク州のロシア人支配地域の進出に備えていたが、ロシアのウクライナ全土への侵攻で気勢を制された形であった。3日目に入り、アメリカから供与されたに対戦車砲が効力を発揮して、ロシア軍はキエフ陥落に至っていない。キエフが陥落すれば、ウクライナ政府の崩壊となる可能性が高い。

 ウクライナ死守と欧米の支援

 多くのロシア安全保障関係などの専門家は、キエフは24時間以内に陥落すると予想した。そして、ゼレンスキー大統領の拘束もしくは殺害により政権が倒れ、ロシアはロシアよりの傀儡政権を樹立する計画だと分析していた。しかし、ウクライナ軍は善戦している。当初、東方地域の侵攻を予想していたウクライナ軍は、ロシア軍の全土の攻撃に混乱した。サイバー攻撃と全土へのミサイル攻撃で当惑したようである。しかし、反撃が始まった。そこで威力を発揮したのは、アメリカが提供した対戦車砲である。ロシアの戦車は多くがこの砲弾で破砕された。

4日を過ぎた時点で、ウクライナ軍はなおも善戦している。戦闘が続いている。キエフはウクライナ軍が守り続け、第二の都市ハリコフも死守している。ロシア軍の劣勢と言える。ウクライナの人々の国を守る決意、18歳から60歳の男子の戦争参加の要請に、多くの人が賛同の意志を示しているようである。アメリカ軍の4億㌦の武器供与、ドイツ軍武器供与に続いて、EUが580億ドルに相当する武器供与を始めている。先進国のハイテク兵器の供与で、ウクライナ軍の優勢がもたらされている。

 和平の話し合い

 プーチン大統領は追い詰められてきている側面がある。ロシアにとって打開の道は2つである。一つは和平・停戦合意、もう一つは軍事増強と核の使用である。和平の道は、プーチンを生き延びさせる可能性が高い。軍事増強・核使用の道は、プーチンの将来はなくなる。

2<和平と戦争の火種>

 この和平が双方の妥協となるとき、戦争の火種は消えていない。クリミヤ併合、東方地域のロシア軍の進出に反対するための運動をゼレンスキーは進めてきた。14ヵ国を巻き込んで、ミンスク合意を改定する試みである。それに対してプーチンはミンスク合意を無視した形で進行に踏み切った。そして、戦争の悲惨を避けるための和平はウクライナの状況を巡る矛盾を何ら解決することなく、とりあえずの平和をもたらす。平和な日常を取り戻すことはそれ自体として意義があるが、この和平を多くの矛盾を解決する形で成就させることも目指されるべきではないだろうか。

3<なぜ、プーチンが侵攻に踏み切ったか>

 ロシア軍の攻撃の目標は、2つある。一つは、ゼレンスキー政権の壊滅であり、もう一つは、ウクライナ軍の軍事施設の破壊である。26日、ロシア国防省はウクライナの軍事施設821か所を破壊したと発表した。この2つの目的は、一言で言えば、ロシアがウクライナを制圧するということであり、アメリカを中核としたNATO勢力を食い止めるところにある。ゼレンスキー政権は、2004年から2005年にかけてのオレンジ革命の成果を踏まえ、民主主義を定着させるべき国家を模索してきた。そのなかで2014年のクリミヤ併合や東部地域の独立に対する抵抗を掲げてきた。その政権の性格はロシアのプーチン政権と相いれないものである。ただ、ここで必要なことはクリミヤにしろ、ドネスク、ルガンスク州のロシア人地域の独立ということが武力で推し進めるというやり方を批判することである。そして根本的な解決のためには、各国の外交という形ではなく、国連を中核として調停、審査、などの道を開くことである。世界で新しい調停の方法を模索すべきではないだろうか。

外交と軍事力が、アメリカとロシアの間で行われているという国際的状況が、泥沼を招いている。ロシアのウクライナ侵攻につながっていると言わなければならない。国連は、国家創設規定を持っていない。今、世界中で、多くの人々の悲惨は国家創設規定が存在しないところからもたらされている。無政府状態からもたらされる人々の悲劇が世界中を覆っている。ウクライナもそうなりかねない。解決を模索できる枠組みがない。アフガニスタンのタリバン政権、ミャンマーの軍事政権、シリアの政権をはじめ、国家がないところに無政府状態が生まれ、その中で人々の悲惨な状況が生み出され続けている。ウクライナも武力による政権樹立という論理の上につくられるとき、戦争状態も政治的な支配統治体制も領土問題も平和解決には至らない。

 プーチンの積極的意図と裏腹に、プーチンにはロシアの防衛という事情もあった。ロシアの防衛の世界戦略としてはいくつかの要因がある。一つは、アメリカの世界戦略に対する反発がある。その反発が「NATOがこれ以上東方に拡大しない」という要請となっている。NATOは、もともと冷戦に対応した軍事同盟であった。冷戦時代は、12ヵ国の同盟であった。冷戦後、ワルシャワ条約機構の解散とともになくなるのが順当であったが、それがアメリカの軍事利用、世界戦略とあいまって拡大、強力化している。現在、30ヵ国となり、旧東ヨーロッパを加えている。ロシアからするとNATO自体の存在が不条理であると同時に、ロシアを敵国とした軍事同盟と映り、危険な軍事同盟と見られる。日本を含め、アメリカ中心の安全保障をとっている諸国からする時、世界はアメリカの軍事力の傘のもとで安全を保つという政策となる。それに加わることが安全を保障するという手法となる。

第二に、アメリカの世界戦略に対する不満が背景にある。ロシアに対する敵対的な政策である。2017年の対ロシア制裁法を上げることができる。アメリカは大統領選挙へのロシアの関与を問題視して、経済制裁を議会で決議している。金融制裁はその時、この法律によって行われている。さらに、プーチン政権の要人への制裁、ロシア財界への制裁が決議されている。プーチン政権としては敵対的なアメリカの制裁に対して何らかの対応をする必要があった。

 第三に、アメリカによるバルト三国、ルーマニア、ポーランドへのミサイル配備がある。それらのミサイル配備は、ロシアの安全保障を脅かし、ロシアは単独で防衛する必要が出てきた。必然的に、アメリカの友好国とは言えない国々への接近となってくる。シリア、インド、中国、いくつかのアラブ諸国などへの接近となっていた。ロシアにとって武器輸出は大きな産業であると同時に、ロシアの世界戦略の一環でもあった。

 第四に、クリミヤ半島とロシア系住民の多い東部地域の領有に関する問題である。ゼレンスキー政権はミンスク合意への不満と東部地域へのロシア軍の侵攻に対する反発とその対応のための様々な対応に対する不満があった。そのためゼレンスキー政権は、NATOの加盟に動いた。しかし、ロシアにとってはNATOにウクライナが加盟することは、大きな脅威であった。

 真の和平に至るためには、これらの要素を取り除き、国連主導での軍事力に頼らない世界の体制づくりが必要である。

4<ゼレンスキー政権の方針と思想>

 ゼレンスキー政権は、ウクライナの独立と統一を基本方針としている。2014年から15年のミンスク合意の改良を進めクリミヤの返還、ドネツク州とルガンスク州のウクライナ国家への呼び戻しを目指していると言える。この方針は、真っ向からプーチン政権の外交政策に反する。 2014年のクリミヤ侵攻に対して、ゼレンスキー政権は、14ヵ国による会議を開き、ロシアの撤退とクリミヤ返還を目指していた。それにNATOへの加盟で軍事的後ろ盾を用意しようとしていた。プーチンは、その流れに対し脅威を感じていた。

 国家と国家の対立する利害に関しては、国連が積極的な関与をすることが、今後、必要となる。強い処理能力を持つことが国連の課題である。場合によっては国連常備軍とそれを背景とした解決が、戦争の回避につながることになる。国連改革が新しい時代を切り開く必須要件となる。

5<ウクライナを巡る対立と戦争に至った事態を見ることから始めよう>

ウクライナ情勢を見ることによって、今後の世界の体制の改革の方向性を見つめたい。

 (1)アメリカの世界戦略は、アメリカが「世界の警察」であるということから「同盟による世界の警察」へ転換している。オバマ大統領は、アメリカは世界の警察ではないと宣言した。過度の軍事費の負担ということが背景にある。同時にアメリカ以外の中国やインド、そしてロシアなどの国力の成長がもう一つの背景である。

 アメリカを中核としながら世界の安全を実現しようとする戦略は、ロシア、中国をはじめ他の国々との軍事競争をもたらすことがある。今回のウクライナ問題が教える教訓でもある。

ロシアがNATOの東方拡大の歯止めを提起することに対し、NATOの事務総長のストルテンベルク氏は「NATOは、各国の意志で自由に入ることができるべきである。」と主張する。NATOは軍事同盟である。軍事同盟による安全保障の体制から、戦争をなくす安全保障の体制に移行すべき時が来ている。 NATOは、それ自体軍事同盟であるのだから安全保障の名のもとに戦争をする機関である。現時点では安全保障のために有用であるかもしれないが、将来的には世界各国の軍縮を進める中で、NATOも縮小の方向に進むべきではないだろうか。NATOを排除し廃止してゆく環境を作るという方向で検討されなければならないのではないだろうか。現在のアメリカの世界戦略は、NATOを中心として日米安全保障条約や米韓相互防衛条約、米華相互防衛条約(台湾)、米比相互防衛条約(フィリピン)、QUAD、AUCUSなどによる安全保障体制である。これらの軍事同盟を強化することで世界をアメリカ型の民主主義で覆うという発想は、一つ間違えば、第三次世界大戦や核戦争につながる可能性を持っている。軍事同盟である限り、敵国が想定されている。ロシアや、中国や、北朝鮮、アラブ諸国などを敵国と想定すると、敵国にされた国は、その軍事同盟を危険で国家の安全を脅かす危機の原因を生み出すものであると考えるのは当然である。

 国連憲章第8章にある「地域取り決め」「地域機関」を認める条項は戦争の原因につながるという点で廃棄に向けて変更を検討すべきである。この条項は、冷戦の環境の中での規定であった。もはや冷戦が終了している中では、不要であるのだが、アメリカの世界戦略の中で生きてしまっている。国連が主導権を握って軍事同盟を廃棄する方向へ一歩踏み出すべき時である。「同盟」は第一次世界大戦を見ても、第二次世界大戦を見ても、すべての国を巻き込んで戦争が拡大していく作用を持っていたことを反省すべき時が来ている。

 (2) アメリカはウクライナがNATO加盟国ではないという理由で、ロシアの軍事侵攻に対する参戦はしないとした。第三次世界大戦を起こさないためであるとも主張している。しかし、多く国の人々は同盟を重視するという発想を持つ。中国が台湾に侵攻したとき、日本はどう対応するのか?自衛隊は出動するのか、ということが議論となる。

 それと同時に、「NATOの体制を強めることが急務である」といった論調が、論説委員や専門家からも出されている。そして中国の海上兵力は強大になってきた。アジアでの兵力に関し、アメリカに対抗する敵対的な軍事力に目がそそがれる。主力戦闘機や戦闘艦艇や潜水艦などは、米軍のアジアでの戦力の5倍から5.6倍である、ということが、問題視される。アメリカ民主主義陣営の軍事同盟で中国に対抗し、同盟を強化しよう、同盟国の軍事力を強化しようという発想になってくる。 今回のウクライナ戦争で防衛力強化、軍事力強化がさらに強調される。しかし、体制の在り方を見直す時ではないだろうか。第三次世界大戦の可能性や核兵器の使用の可能性を持つ世界の情勢を転換すべきである。新しい国連規約で改革すべきである。ウクライナ紛争は人類の危機につながることを露呈しており、それに対処するためには新国連の新しい体制が必要である。第三次世界大戦と核戦争は回避しなければならない。

(3) 軍事強化の発想は、武器供与、武器の貿易、輸出入品の軍事転用の可能性などの問題となる。武器輸出や武器供与がそもそも、戦争の原因である。ロシアは、インド、中国、シリアなどに武器を提供している。武器の世界的取引も、軍需産業も、国連の軍縮局で取り扱われ管理されるように改革しなければならない。戦争を防ぐ体制ということが真剣に考えられなければならない。

(4) ウクライナの戦争をなくすデモに参加した人々の声は、戦争そのものをなくすという声である。その中にはウクライナに対する愛国の感情もあると思われるが、世界が連帯すべきは戦争をなくすことである。単に戦争をしない、ロシアは撤退せよという声は、戦争をしない体制への世界的転換によって、戦争しないことが本当に実現できるのではないだろうか。戦争をしない体制への転換につなげるべき時である。ウクライナ側は、市民兵を募っている。和平交渉を有利に進めるために、人々の生活を守るために、市民兵の募集になっている。しかし、市街戦になれば犠牲者は飛躍的に増大することになる。犠牲を少なくする工夫も必要である。より重要なことは、和平の提案が真の平和につなげることである。それには、戦争に反対する声を結集し、永続的な平和につながる和平規約を結ぶことである。世界中の人々がウクライナ紛争をきっかけとして、世界平和の作る国連改革を検討するべき時である。

 (5) ロシアのウクライナ侵攻は、明確な「国際法違反だから」強く非難するという声明が出されている。しかし、国連憲章は、履行されていないことが多い。さらに、国連憲章自体にいくつかの矛盾と問題もある。その意味では、国連と国際法、アメリカの世界戦略ということが混ぜあわされている。国連憲章自体の検討が必要である。総会は機能していないことが多い。安全保障理事会は戦争を許容してきた。朝鮮戦争、ベトナム戦争、スエズ戦争、パレスチナ戦争、ハンガリー侵攻、チョコスロバキア侵攻、アフガニスタン戦争、湾岸戦争、イラク戦争などを見ても安全保障理事会が機能したとはいいがたい。PKOは一方で成果を出しているが自己防衛以外には武器を使用しないという規則のため、多くの人々を見殺しにしてきたという側面がある。このような事実から国連改革が必要だと思われる。

6<戦争継続のシナリオ>

 ウクライナ市民は抵抗を続け、多くの市民が戦闘に加わる。市街戦へ突入することとなれば、死傷者は飛躍的に増大する。 アメリカ、EU諸国は武器支援が有効だと判断する。対戦車ミサイルで多くのロシア軍戦車が破壊され進行を食い止めている。すでに、アメリカやEUも武器支援を供与している。日本や多くの国も同じ歩調をとる可能性もある。そのとき戦況はウクライナ軍の優位に傾く。戦争を起こしたロシア・プーチン政権に対する批判が、戦争反対の声に後押しされて、ウクライナへの軍支援となってきている。ウクライナの人々の愛国心にも火がついている。戦争をやめようという声が、ウクライナを支援しようという世論に多くの人々が傾いてゆく。

今の国際秩序、NATO体制は、磐石の体制ではないことを今回のウクライナ戦争の最大の教訓とすべきである。多くの人々、専門家が体制強化の必要性を説いている。しかし、別の目で見れば、それは軍事力の強化である。

プーチンを追い込み、圧力をかけ続けることで、プーチンは反省するだろうか。プーチンを国際裁判にかけることはできる。世界はそのように戦争責任追及をしてきた。東京裁判やナチス裁判にみられるように、戦争犯罪の裁判が、正義と公正さに反することも多くあった。

人間は罰を受けて反省するであろうか。「窮鼠猫を噛む」の例えの通り、ロシアを追い込むとき、国連の非難決議は世界の世論を反プーチンの方向で圧力をかけている。大切なことは非難することではなく、戦争を終わらせることである。ネズミを追い込むことは猫を噛ませることにつながる危険性がある。窮地に追い込まれたとき、核兵器を使用する方向になる可能性もある。

国連体制が同盟国だけが正義であるという世界観になっている。しかし、NATOは平和のための機関ではなく軍事同盟である。安全を保障するものとは言い切れない。NATO加盟国は、同盟国との連帯を自国の安全保障につなげるという意図でNATOに参加している。しかし、世界全体を考える時、世界戦争の危険を一掃する方法とは言えないのではないだろうか。

<ウクライナ問題の解決方法―和平合意への提案>

 では、ウクライナ問題、ウクライナ戦争はどのように解決できるのか。

現在、ウクライナとロシアの間で話し合いがもたれている。両者の主張は、隔たっていて合意に至るのは厳しそうであるが、戦争という悲惨な現実からすると、合意に至らねばならないという意志は両者とも強い。ウクライナ側はロシア軍の即時撤退を求めている。ロシア側はウクライナの中立と武装解除を求めている。では、クリミヤ半島の問題、東方地区の問題はどのように解決に至るのだろうか。そしてウクライナのNATO加盟の問題などが残る。国連を交えて、協議する原則を打ち立てることで即時解決を図ることで、合意の道は開かれるのではないだろうか。

私の合意案である。

* 次の条件のもとに停戦をする。そして、国連のPKOをウクライナにいれる。ミンスク同意とドネツク、ルガンスク両州の独立については国連の委員会で検討する。その際、国家創設新規約を成立させる。ウクライナは憲法にのっとった政権を保持する。

1 NATOの役割の国連による検討の部局・委員会を設置する。

 2 経済制裁の全面解除

 3 国連改革、安全保障理事会の将来的組織規定変更

 4 国連の国家創設規約の確立。

 5 国連の平和維持活動PKOの中にウクライナの管理を移す。

詳細説明)

1 世界の軍事同盟に関する国連審査委員会:国際平和と世界の各国の安全保障という観点から委員会は検討を進める。場合によっては、NATOやその他の軍事同盟を廃棄する方向になる案を立てる可能性をも視野に入れるべきである。国連憲章の8章の52条から54条の地域機構の規定をなくす方向で改革を検討することも含まれる。これは、アメリカを含めた全世界的な問題の章で国連が関与する必要がある。世界の情勢は、帝国主義を離れ、冷戦を終了し、国際法の確立に向け多くの国の市民がクローズアップされる時代である。この動向は国連自体の改革も視野に入れて、真の平和を実現できる体制を作る時が来ている。ウクライナ問題はそのきっかけとなりえる。そのことなくして、ウクライナ問題の根本からの解決はあり得ないのではないだろうか。軍事同盟を将来廃棄するという規定を作る。国連が世界の各国の安全保障の機関として新国連規約を作る。軍事同盟に関する新たな国連規約は、世界の軍縮と並行して進められる必要がある。ロシアが要求するようなウクライナの中立の問題はロシア、アメリカも含めた世界の国々が軍事力の縮小と合わせて検討されるべき時代に入っている。

 2 経済制裁の解除

 ロシアの撤退の終了とともに、経済制裁を解除する。段階的花序でもいい。これまでのロシアの支配地域の軍事解除も含まれるべきかどうかは、国連の諮問員会の調査と提案にゆだねるのがいい。各国の外交として行われるのは適切ではない。各国はその進言を尊重して対応することが、世界の融和につながる道である。

 3 国連改革

 10年間、20年間にわたる改革となるかもしれない。できるところから実施する。そのための準備を進める委員会を創設する。常任理事国が国連憲章を順守しないという非難が多くの国から出されていた。国連を機能させるための国連改革が必要である。PKOを有効にするための改革も併せて検討される必要がある。国連の軍縮局の協力や国際原子力機関IAEAの協力も必要だと思われる。 国連改革は常任理事国など利点を排除する可能性があるので、多くの国が反対する可能性もあるが、この委員会ができることで推進されると思われる。多くの国での市民運動がかくかくの実現を可能にするものと信じたい。そして、戦争をなくすという人々の声が改革の主役になる。それのみが戦争をなくす道への第一歩がウクライナとロシアの合意から始まることになる。

4 国連国家創設規約案 

国連の国家創設規約を早期に確立し、その規定に合わせたクリミヤ半島のロシアによる軍事支配やドネツク州、ルガンスク州の独立もしくはウクライナへの組み込み、ウクライナ国家の独立性などを検討する。これらの地域の軍事支配の解決は、外交的交渉によるのではなく、国連の国家既定に関わる委員会が主導して調査、審査、解決案の策定を行う必要がある。

5 国連PKOの管理下に置く

この条約を国連監視下に置いて履行すべきである。国連の治安維持局PKOにその維持をゆだねる。ロシア軍の撤退と、軍事基地は国連管理下に置く。ウクライナの中立化も国連管理のもとで行うことで、戦争のない地域を創出することができる。そのためには、国連改革が必要である。

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