和平に向けて

ウクライナ戦争は、終わりが見えない。多くの国家が戦争を拡大する方向に動いている。ただ、大半の人々は終結を願っている。その声が、戦争を終わらせるように組織化することが必要である。そのことが、我々が、そして多くの人々が自らを救う道である。

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*今回第14号は<ウクライナ戦争の和平に向けて>というテーマです。

■世界の現状とニュース  ◆テーマの解説・考察 ◇歴史的考察 ❖卵の会の主張

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■ <和平の可能性> ウクライナ侵攻の当初から、ウクライナの政権、ロシアの政権、欧米諸国、国連などに、停戦への努力は見られない。国連の安全保障理事会はロシアへの非案決議案を出したが、ロシアの拒否権で否決になった。そもそも非難決議を出すということ自体が和平への動きにはつながらない。そのあと総会での非難決議は141ヵ国が賛成し、ロシア中国などの反対と棄権、無投票が52ヵ国にのぼった。22年11月17日、マクロン大統領が「平和と戦争終結を求めなければならないとして、停戦協議を呼びかける考えを表明したが、23年1月末には戦闘機の供与を検討することなどに見られるように一貫した停戦への姿勢は見られない。

ゼレンスキー政権も、プーチン政権も、戦争での勝利しか念頭にない。戦争継続を強調し続けている。ただ、識者の中には「休戦協定」という形が現実的ではないかという見方が出てきている。ロシア側もウクライナ側も完全勝利には何年もかかりそうである。戦争による犠牲も双方に大きすぎる。1953年の朝鮮戦争のような休戦協定のような形での休戦が現実的かもしえない。とりあえずの休戦案は有効かもしれない。昨年9月のロシアの部分動員令で何千人ものロシア人男性が国外に脱出した。欧米諸国に支援疲れも出てきて、食糧危機、エネルギー危機、気候変動への悪影響など経済的打撃と社会情勢の疲弊がすべての国の負担となってきている。

 ウクライナ政府の対応は、反ロシアのプロパガンダに終始している。核戦争の危険性を「はったり」とみなし、ロシアに勝つことと復讐心が支配しているように思える。ウクライナの政権には、経済的な世界経済への影響、食糧危機などの問題などを考慮するゆとりがないようである。従って、戦争終結への模索はなく、友好国の同情を得ることに終始しているようである。

北大西洋条約機構NATOはむしろロシア侵攻の原因を作っているので、和平への道には反対の方向にある。武器供与する国は早く戦争を終結させるためという。事実は反対に戦争を激化し、拡大し、長期化させている。武器供与で戦争は終結するどころか、激しくなり、終わりが見えなくなる。西欧諸国の人々の間に、戦争支援に疑問を投げかける声も出始めている。ロシアの社会にも戦争反対の声はある。それをどのように組織化するかが、我々全員の課題である。

❖国連への働きかけを行う国が出てくれば戦争終結の方向に動く可能性はある。是非、日本政府にその労をとっていただきたいものである。

 

■<武器支援・武器輸出>

 戦争を拡大し、長期化しているのは、武器供与ということが大きな要素である。ロシアは、「我々はウクライナだけと戦っているのではない。米国をはじめとした西側諸国と戦っている」と言っている。武器供与が戦争を激しくしている。

 22年12月19日、プーチン大統領はベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、武器の相互供給や共同開発、合同軍事演習の継続などの連携強化の合意をしている。また、イラン製のドローンの攻撃を行っている。ドローン250機をロシアは新たに入手している。ワグネルは北朝鮮からミサイルなどの武器を購入している。インドもトルコも武器輸出に力を入れている。

❖国連に武器供与を規制する制度がないことが国連の機能停止を招いているといえる。武器供与を規制する国連憲章の改訂を検討する必要がある。

■<戦車の供与>

 欧米のウクライナへの武器供与は、春にはスティンガ-、ハイマースにより地上戦を優位にし、パトリオットが12月に供与されミサイル防衛に至っている。そして23年になって戦車供与でいよいよ本格的なNATO軍指導の地上戦に突入する。2003年イラク戦争でイラク軍を攻略したNATO軍式の機甲戦になる見通しである。欧米の軍隊では、戦車部隊は通常、4両で1個小隊を構成する。カナダは4両、1個小隊の戦車を供与する。小隊+隊長車1両で1個中隊(計13両)となる。イギリスはチャレンジャー2を14両、ドイツはレオパルト2を14両、ポーランドも14両、米国はエイブラムスを31両供与する。各国はウクライナ軍がNATO式戦車部隊を編成する支援をしているわけである。総計321代の供与が決まっている。イギリスはウクライナの戦車を操縦する部隊をイギリスで訓練を開始する。NATO軍が戦争に携わっていると言えなくもないが、NATOは第三次世界大戦への発展を危惧している。

 これらの戦車は、3月から4月にウクライナに到着する。春から夏にかけて戦車部隊での戦闘が激しくなる。ロシアとしては、まず輸送のための鉄道を破壊する可能性はあり、輸送路を寸断されるとそれの修復に時間もかかり長期にわたる戦闘となる。さらに、ロシアは兵力を150万人にするという軍備強化にも乗り出している。ウクライナはさらに戦闘機の供与を要求しており、米国は供与を否定しているが、フランス、ポーランドなどは検討すると述べておりさらなる拡大もあり得る。

❖和平への道を探ることなく、武器供与を継続することは、戦争を泥沼化させている。ロシアの軍事的行為に対する非難と制裁よりも、和平案を提案し、それに賛同する国を外交交渉で募ることが、戦争を阻止し、終わらせ、平和をもたらすことにつながるのではないだろうか。

◆<何故、ロシアはウクライナ侵攻に踏み切ったか>

 ウクライナとジョージア(グルジア)のNATO加盟問題が火種となっている。ロシアからすれば、反ロシアの世界体制の圧力と受け取られている。2006年グルジア(ジョージア)のサーカシビリ大統領は、NATO加盟の意向を示し、2008年8月7日から16日にかけてグルジア戦争が起こっている。ロシアがグルジア侵攻を行った。南オセチアとアブハジアが独立してロシア系の共和国を建国している。かつてバルト三国もNATO加盟でロシアの圧力を受けた。

NATOの東方拡大がウクライナに及んだ時、ウクライナ侵攻につながった。ウクライナにおけるロシア系住民地区の問題と並んで、NATOの東方拡大は、ウクライナ戦争の原因となったことを欧米諸国も考慮し、それを解決する方策を呈示することが和平への道である。

ゼレンスキー政権のNATO加盟の方針はロシアのウクライナ侵攻を呼び入れている。ウクライナの独立には、ミンスク合意やブタペストの覚書とあわせて、国連の関与が必要であった。NATOという軍事同盟に頼るという世界体制の構図に関しても国連の根本的な関与が必要である。

 NATOが軍事同盟として大きな勢力となっているが、同時に戦争の原因を生み出しているという事実がある。むしろ、NATOを国連に吸収して国連軍編成につなげるような道を模索すべきではないだろうか。国連の根本的な改革も必要となるが、戦争を廃絶する方向には、国連憲章の第8章の改訂を含めた秩序が必要となってくる。

❖国連は、NATOという軍事同盟を中立で平和の機関に作り替える方策を検討すべきである。国連憲章の改訂を踏まえて行うことが必要要件となる。国連憲章第8章の地域取決めの規定は、戦争の原因となりかねない。NATO軍を国連軍として平和の軍にすることによって、世界の平和な秩序をもたらすことができる。国連軍は国家を超えた存在にしてゆく努力が戦争をなくす軍となり、人類の平和につながる。

■<難民>

 欧州への難民は、780万人を上回った。ポーランドの受け入れは150万人を超えている。ポーランドは22年だけで83億6000万ユーロ(1兆2000億円)を難民のために費やしている。滞在費の一部をウクライナ人に負担させるようこれまでの規定が改正された。エストニアは住宅や仕事が不足してこれ以上の支援は難しいとしている。フィンランドに受け入れを要請している。オーストリアはウクライナ人に提供していた列車の無料利用を24時間以内に制限するとした。ドイツの右翼政党「ドイツための選択肢」(AfD)は支持を伸ばしている。AfDは対ロシア制裁の解除を求めている。国民の15%の指示をあつめ、ドイツ社会民主党SPDの18%に迫っている。

 ウクライナ難民のほか、中東やアフリカからの難民がEU諸国に押し寄せいてきている。世界経済の原則や食糧価格の高騰が途上国を直撃しているという背景がある。ウクライナ戦争継続がヨーロッパ諸国の首を絞めつける結果となっている。社会不安は大きくなる。イタリアのメローニ首相は非正規移民の流入を阻止する公約を掲げていた。地中海に難民が漂流している。一例としては、民間の救助船が234人の難民をフランスのトゥーロン港に到着させた。3週間海上待機していた。EUのダブリン規則は移民が最初に到着した国が責任を負うことと定めている。負担の多い南欧は見直しを求めている。EU諸国は6月には移民受け入れを分担する「連帯メカニズム」で合意している。中央地中海ルートからの移民流入とブルガリアやセルビアを横断してハンガリーなどを目指す西バルカンルートの2つのルートがある。あわせて1年間で20万人を超えている。バルカンルートの出身国はシリア、アフガニスタン、チュニジアなどだ。シリア難民の大量流入が2015年~16年で大きな問題となったが、シリア難民はトルコが大量に受け入れている。

 EUは滞在資格のない移民の送還を強化する検討に入った。協定を結ぶ国は、バングラデシュ、パキスタン、エジプト、モロッコ、チュニジアナイジェリアなど。これまで実際に本国に送り返されたのは2割ほどである。22年は不正な国境通過が33万人にのぼる。治安悪化や失業率の高まりにつながるので反発が起きている。

❖ 難民は戦争状態から生まれている要因が圧倒的に大きい。人類の悲惨はここでも生み出され、国家の大きな危機につながっている。難民対策という後手の政策よりも、まず和平を実現することが最優先にされるべきである。

 

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【卵の会 活動ニュース】

❖ 2月よりメールマガジンの発信は、月3回、2日、12日、22日とさせていただきます。

❖ 日本政府への請願書の内容を検討しております。案の段階ですが、興味のある方にお送りいたします。ご意見をお寄せください。

                

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