武器供与・武器輸出より 軍縮

国連改革 NGO 卵の会 メールマガジン  第17号   2023.3.16

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戦争をする主体は近代国家である。戦争を起こすものは武器である。戦争を拡大し、長期化させるものは、武器供与・武器輸出である。武器をなくすこと、減らすこと、監理することが戦争終結への道である。

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■(中国のロシアへの武器供与)欧米各国も、ウクライナも、中国がロシアに武器供与するかどうかに神経をとがらせている。中国が武器供与すれば、戦争の規模が拡大し、ウクライナもNATOも新しい危機を迎える。ドイツのシュピーゲル紙は中国企業がロシア軍に100機規模のドローンを売却する計画だと報じている。

■(欧米側の武器供与) アメリカのウクライナ支援は1年間で1130億㌦(約15兆円)にのぼる。アメリカの中に支援疲弊が出てきている。マジョリー・テーラー・グリーン下院議員はマット・ゲーツ下院議員らとウクライナ支援の打ち切りを求める「ウクライナ疲弊決議案」を提出した。

日本は、ウクライナに対し、2月末に55億㌦の財政支援をしている。また、地雷の探知機や除去機を提供している。

ウクライナは開戦前に、2500両の装甲車両を持っていた。それらがほとんど損耗している。欧米各国の戦車供与が話題になっているのはその為でもある。供与される兵器は高度化している。ミサイル迎撃システムや戦闘機などが検討され始めている。さらに国際法で禁止されているクラスター爆弾もウクライナは要請している。

■武器供与は、武器支援であり、無料の武器輸出である。イエレン財務長官は「我々の支援は慈善事業ではなく、世界の安全保障と民主主義への投資だ」と語りかけた。歴史の錯誤ではないだろうか。アメリカ支配を広げるために、安全保障や民主主義を持ち出しているだけとも言えそうである。ロシアの侵攻と戦争行為を止めることは重要であるが、ウクライナへの支援が反戦争であるということは言えない。国民の多大の犠牲の上に戦争継続をして、和平への努力は全く見られないこと、武器供与を呼びかけることに政権の努力は限定されてしまっている。

◆2月24日の国連安保理の会合を開催している。欧米側と中露などで意見は対立している。中露は欧米によるウクライナへの武器供与が事態を悪化させていると主張している。軍事ブロックの強化、拡大は地域の安全保障を弱めるだけだと中国の大使は主張している。

 武器供与停止を和平と同時に行おうという発想は双方にはない。ロシアとウクライナの人たちの犠牲が続く。

■(軍事同盟)軍事同盟は、戦争を誘発し、拡大する。NATOは国連を尊重し、戦争を避けると言いながら、コソボ、アルガにスタンなど、戦争に関与してきた。今、新しい軍事同盟AUKUSはNATOが集団的自衛を中心にするのに対し、軍事技術での強力を目指すものである。軍備拡張につながる。AUKUSは、2021年9月にバイデン大統領の呼びかけで始まっている。イギリスとオーストラリアの3ヵ国の軍事技術提携である。原子力潜水艦の共同開発が話題になっている。中国を仮想敵国としているので、中国の反発は強い。緊張関係を生み出している。核拡散につながるという批判を中国はしている。豪州も英国もそのために軍事費を増やしている。豪州は原子力開発にGDPの0.15%を割く。英国は軍事費をGDPの2.5%に引き上げた。今後30年間の原子力潜水艦開発への投資額は3680億豪ドル(32兆円)である。

❖国連の軍事同盟の規制をどのように行うかということは、軍縮とへ呼応して重要課題である。米国の軍事技術開発期機関のDARPAや軍事技術共同開発の同盟AUKUSなどの軍事技術開発も、何らかの国連による管理への関与が必要ではないだろうか。ロシア、中国その他の国の軍事的な開発競争を国連管理にするということは新しい条約が必要だが、そのための努力は人類を戦争から守るのに不可欠なのではないだろうか。

■人工知能(AI)・自動監視システムといったものは武器の一つである。民間のベンダー各社はウクライナ軍に人工衛星や各種センサー、ドローン、様々なソフトウエアを供給している。これが敵に照準を合わせるのに役立っている。新しい時代の武器の一つだと言える。

◆(反撃能力)中国、北朝鮮ともにICBM(5500キロ以上)は米本土を標的とする対米抑止を意図したものである。日本との間では、中距離ミサイル(ここでは500~5500キロ)が問題である。中国は中距離の弾道ミサイルを約1900発、巡航ミサイルを約300発保有している。中国は、台湾有事や日本有事の際に米軍の介入を防ぐため、西太平洋地域から米軍を排除する「A2AD(接近阻止・領域拒否)」戦略を構築してきた。中国の中距離ミサイルは在日米軍基地やグアムの米軍基地を標的とし、この戦略を支えている。米国は、ソ連との間で1988年に発効した中距離核戦力(INF)全廃条約(2019年失効)の制限を受けていたため、中距離の地上発射型ミサイルを保有してこなかった。その間に中国が中距離核戦力を大量に持つようになった。

 韓国も米韓合意に基づく制限を緩和しつつ、弾道ミサイル「玄武4」(800キロ)や巡航ミサイル「玄武3C」(1500キロ)を開発・保有している。台湾も地対地の巡航ミサイルを保有している。

 日本は地対地ミサイルを保有してこなかったが、18年の防衛大綱改定で、敵の脅威圏外から発射可能なスタンド・オフ・ミサイルの導入が明記された。この時点では反撃能力の手段としては規定されていなかったが、陸自の「12式地対艦誘導弾」(百数十キロ)の射程を1000キロ程度に延伸した上で対地機能を持たせた改良型や、「高速滑空弾」(400キロ)などの開発を進めてきた。今回の3文書改定後は、これらを反撃能力の手段とするほか、米国製巡航ミサイル「トマホーク」(1250キロ以上)を26年度にも部隊配備する。政府はこれらのミサイル計1000発以上の保有を検討し、車両、水上艦、潜水艦、航空機といった多様なプラットフォーム(発射母体)を整備する方針だ。

 なお、政府は22年11月に、3000キロ級のミサイル保有はあり得ると答弁しており、実際に開発する方針だ。射程が短ければ、対中国での配備地はおのずと沖縄県に限られる。射程距離を延ばすことは、沖縄基地問題に備えることも可能になるというわけである。

■ 集団的自衛権の行使と防衛力強化は、大きな覚悟を求められる。ベトナム戦争で米国の要請を受けた韓国は30万人以上を派兵して、約5000人が死亡した。イラク戦争に参加した英国も170人以上の死者を出した。93年のカンボジアPKOで文民警察官の高田春幸さんが殺害されたとき日本国内は騒然となった。集団的自衛権や敵基地攻撃能力ということが、大きな人命を失うことになる方法である。むしろ軍縮を提案してゆくことの方が、重要であるように思われる。

◆(世界の軍事費)

 2020年の世界の総軍事費は1兆9810億㌦(217兆円)である。冷戦終局時点の1990年に比べて4割増えている。1.アメリカ、2、中国、3、インド、4.ロシア、5.イギリスで、日本は491億㌦で9位である。アメリカの国防費は、2021年度会計で、7330億㌦(約80兆1000億円)である。中国は1兆3553億元(約23兆2000憶円)である。その後も、中国は21年22年と増え続けている。

◆(西側の軍備)

アメリカは軍備をグローバルに展開をしている。中国は東アジア中心である。さらに中国は政府会計の表れない部分も多いと見られている。艦艇の数は、中国が350隻、アメリカは300隻であるが、アメリカの艦艇は規模が大きく優れた攻撃・防御システムを備えている。高度な指揮命令系統のネットワークもあり、軍用機と水上艦、潜水艦と結びついている。

現在、航空自衛隊の戦闘機はF4,F15,F2の三種類である。1971年から配備が始まったF4は、老朽化のため2017年末から最新鋭のステルス機F35に切り替えていっている。F2は艦船をミサイルで攻撃する戦闘機である。三菱重工業は生産を終え、30年以降に退役させる。F35はアメリカ、イギリス、イタリアなど9カ国で共同開発している。開発費は6兆円にのぼる。日本は国産の可能性を探るためステルス性能の試験を始めるため、2016年から先進技術実証機X2を使っている。国産戦闘機の復活が課題となっている。

◆(軍事産業と武器輸出)軍事産業は、アメリカ、ロシア、中国は国と一体となって巨大化している。インド、トルコ、イランも武器輸出に積極的に乗り出している。かつては、イギリスは巨大軍事産業で世界を支配し、大英帝国を気付いていた。フランスもアフリカを中心に、植民地支配を進めるために軍事産業が背後にあった。

 今年、2月10日の閣議決定で防衛産業の生産基盤強化法案で、防衛装備金の輸出を促進する基金の創設を盛り込んだ。2014年に安倍政権が武器輸出を可能にしてから、日本は武器輸出する国になった。しかし、軍事装備品の輸出で実現したのは、フィリピン向けの警戒管制レーダーのみにとどまっている。今年の岸田政権の動きは装備品の販路を拡大し、活性化する意図がある。

 自衛隊の「C輸送機」は、UAEやニュージーランドが関心を示している。防衛装備庁は、20年度から商社や防衛関連企業と組みインドやベトナムなどを対象国に需要を探る事業に乗り出した。防衛産業はすそ野が広く、戦闘機の生産なら1000社、護衛艦には8000社の規模でかかわる。防衛参謀は8%の利益率の見込みで自衛隊と契約する。その後のコスト高などで現実的には2~3%になる。

❖武器供与・武器輸出は、世界に戦争を広げる。国連の規制が必修である。ただ、国連が武器をすべて管理するということはかなり難しい。産業の広がりが大きすぎる。しかも国は軍拡を進めることを安全保障と考える本末転倒した発想を持っているのが、世界の国家政策の安全保障政策の現状である。一歩、軍縮を進めるためには、国家に対して国民が意見を形成させることが欠かせない。

 軍備縮小をどのように働きかけるか、という課題は国連改革の最大で最重要な課題です。国家は軍備に頼る側面が大きいので、総会や安保理では難しいところがある。市民、企業は、武器を必要としないので、市民社会や企業の国連参加の力とあわせて、提案への道を開く必要があると思われる。

 市民の集会など、軍備縮小を訴えることが、第一歩となりそうである。

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