市民の声を国連に

第18号   2023.3.25

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市民の声を反映するにはどうすればいいのか。民主主義は選挙以外の方法もある。デモ、集会、請願書、陳情書、評議会などがある。国連に人々の声を届けるにも、壁がある。国家が国際社会のメンバーであるということは国際法の原則でもあり、そこに国連の限界と機能不全の根本的な原因がある。 民主主義の危機、戦争の多発、軍事依存増大、国連の機能停止、経済の分断とインフレ、それに加えて金融危機がやってきている。多くの人が集まって、「戦争停止・戦争をする支援の停止・和平の努力」の声をあげたいと思います。

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■世界の現状とニュース ◆テーマの解説・考察 ◇歴史的考察 ❖卵の会の主張

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◇市民の声を国政に反映させるということは、市民社会を基盤とした近代国家の基礎であった。それが民主主義的な国民国家の形成につながる。2011年のアラブの春は、中東での民衆の声の反映で新しい時代を予感させるものであったが、ほとんどが失敗してしまった。中東アラブ世界に民主主義的な政権の樹立はほとんど実現できていない。シリアではアサド政権の圧政と、ISの台頭があった。アメリカの影響を受けた反政府勢力とロシアの影響を受けたアサド政権が戦争を繰り返している。

◇イラク戦争から今年の3月20日で20年を迎えた。戦争勃発の時の米国務長官パウエルの首席補佐官だったウィルカーソン氏は「イラクへの侵攻は、21世紀に進めた米国の作戦で最大の失敗だった」と述べている。強権的な政治体制の武力攻撃では民主主義を獲得することはできなかった。その後、イラクでは汚職がはびこった。政府への批判、激しい抗議活動が続いた。水質汚染や深刻な干ばつなどがあり、行政は停滞した。失業率は35%であった。禁酒例が出されたが、闇市場が広がった。

■ウクライナへの武器支援は、アメリカでもフランス、その他のEU諸国などでも顕著になっている。社会的状況に敏感な市民は、インフレや財政難に直面した時、外国に武器を支援する必要があるのだろうかという疑問を持つ。侵攻を行ったロシアを非難する気持ちのみが武器支援を実現してきた。自由を守るとか、民主主義体制を守るということが、ウクライナの勝利によってもたらされるということは考えにくいことを多くに人が自覚している。恨み、復讐が、ほとんどの人の判断の根拠になっているではないだろうか。

■フランスの年金改革への反発が大きなデモとなっている。マクロン大統領を批判する声となっている。ただ、財政健全化が実現できないと、EUが揺らぐ。フランスのEU離脱はフランス政府としては何としても避けたいので、年金改革を断行しようとする。

■アメリカのデモは、多くに人を集めている。2022年に仕事を一時拒否するストライキに参加した労働者は12万人余である。教員不足と、医療制度の不備に関する改善への要求が中心で、参加者の6割が教職者、3割が医療関係者である。 アメリカでは多くのNGOやNPOがアメリカの労働の2割を占めている。市民の声は常時社会を作っている。 トルコでは地震の対応に対する政府の不備と、不動産業に関する政府の行政の不備、などで大統領批判が強まっている。 ブラジルはボルソナロ氏支持の中間層が貧困層を重視するルラ政権の政策を批判し、今年1月8日暴徒化した。長引くインフレに市民生活が悪化していることが中間層の不満の背景にある。デモ隊は軍隊の出動を求めている。ボルソナロ氏はSNS戦略が巧みなポピュリスト政治家として知られ、農家、宗教保守派、元軍人らの支持基盤を持つ。

❖世界中に政治政策的な主張がデモに反映する。その中でグローバルな課題はほとんどない。世界が多くの危機を迎えている情勢の中で、人々の声が国際的な世論に一歩、近づけたいものである。核の廃絶、戦争停止、武器の削減など、世界共通の平和への呼びかけは、国連改革の大きな力となる。

■メキシコのロペスオブラドール政権が選挙管理当局の人員を35%削減の法改正案を可決した。国家選挙庁(INE)は、現在1万7000人であるが約6000人の人員を削減する。人員削減で約35億ペソ(260億円)を削減できると訴えている。政権には選挙を有利に進めるという狙いがあるという批判もある。2月26日の反対集会では50万人以上が参加した。

❖カネのかかるアメリカの大統領選挙のような形も、好ましいとは言えない。今後、世界の市民社会を成長させて国連の改革を実現するためにも、どのような選挙がいいのか、国連でもガイドラインを検討したいものである。

■タイの総選挙は5月の投票になりそうである。しかし、選挙で民主的な国政ができるかというと、そうとも言いかねない。現政権の状況は「欠陥民主主義」とも呼ばれている。タイは、2014年国軍のクーデターで軍政を引いた。19年に民政に移管後も新軍政党が連立与党の軸となっている。国軍の意向が強く反映している。国軍が新軍勢力を通じて、首相を指名し、選挙に影響を持つ。新軍政党の「国民国家の力党」のプラウィット副首相が続投を目指す。民主勢力を目指すペートンタン氏(タクシン元首相の次女)は「タイ貢献党」から首相候補に担がれる。世界は、民主主義、グローバル市民社会にはまだまだ遠い。

■イギリスがウラン劣化弾をウクライナに供与。ウクライナがクラスター爆弾の供与を求めたのに続いて、国際法違反に近い武器使用が起ころうとしている。市民の声は英政府に届いていない。スロベキアは戦闘機のウクライナへの供与を決定した。戦争は激しくなる。

■イスラエルが最高裁の決定を議会で否定できる法改正を進めている。ネタニヤフ政権による司法制度改革案への市民の抗議行動が続いている。1月21日には10万人以上が参加した。政権は多数派の意見を通すという主張である。しかし、多数派が入植政策などを進め、パレスチナ弾圧の政策をとる可能性は高い。人権よりもユダヤ人の民族意識が尊重される。三権分立の法の原則が崩壊し、民主主義が崩壊する危機にある。

❖ロシアでは市民の声は、抑え込まれている。反戦の声につなげることは、ロシアでもウクライナでも必要である。両政権とも国家を代表し、戦争する。

❖日本は、デモが極めて少ない。ある意味で恵まれているからかもしれない。行政や社会に対する不満は多くの人が持っているが、何とか満足できる生活を持てていると言えるのかもしれない。インフレ率も他国より低く、格差もあるが貧困が連帯を呼ぶまでになっていない。あるいは国民性なのだろうか。世界の他の国よりましだともいえるのだろうか。軍備増強などをまえに、戦争の危機で社会意識が大きくなることは避けたいものである。

デモや選挙の投票率の低さなどが、平和ボケや社会意識の低さや無知が原因だとすると、それ自体が危機かもしれない。

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