世界各国のコロナ対策の財政

新型コロナ対策で各国の政策は財政だよりになっている。世界の政府債務の平均値も、GDP比で96%だったものが1年で125%に膨らんでいる。コロナ禍のもとでは、「公的債務を増やすことが正当化される」という状況である。一番多いのが日本で252%である。二番目がイタリアで156%である。三位がアメリカの126%である。ドイツは財政赤字を回避することを国策の中心にしてきたが、コロナ禍をきっかけに方向転換をして財政支出に舵を切っている。ショルツ財務相兼副首相の意向が牽引している。 日本も、第一次補正予算で約25兆円、続いて32兆弱の第二次補正予算を組んだ。第三次補正予算は19兆円余りを組んでいる。また、2021年度の予算は、106兆円を超えている。  財政支出が巨大化したことに関しては、一時的なものか、恒常化させるかということが大きな問題である。まずは財政膨張が、どれくらいの期間実施されるかを留意する必要がある。経済対策は、2020年限りか、21年度も継続する2年越しのものか。3年間の経済対策として必要か? バイデン政権は、1月に発表した1.9兆ドル(約200兆円)の対策費を、対中国政策と重ねて経済力を強くするための、8年間の計画としている。  第二に、恒久的な制度としようという意見もある。スペインは、災害対策費、気候変動との組み合わせ、最大1015ユーロ(約12万円)の所得補償を国民の5%に当たる層、230万人に配布している。費用は300億ユーロである。それをコロナ後も所得保障制度にしようという動きもある。 <コロナ対策の支援方法>  コロナ対策の経済支援としては、各国ともまず、現金給付が主である。 アメリカの場合、現金給付がコロナ対策費の中心になっている。トランプ政権下で2020年3月に1200ドル、12月に600ドルの給付が行われている。バイデン政権は2021年3月に、1400ドルの給付を決定している。4人家族の場合、最高5600ドル給付となる。20年3月の対策では、失業給付、納税支払い猶予、保健返済猶予、住宅の強制立ち退き一部停止などの対策が取られている。失業給付が20年8月末までで2460億ドルの予算が組まれている。失業者は21年4月現在で970万人である。コロナ前が57万人であった。バイデンの経済支援には、低所得者向けの食糧補助を増額したり、受給者を広げる対策もある。アメリカでは14%の世帯が十分に食べていないという調査結果があるという。また、財務長官に就任したイエレン女史は、中小企業の救済と雇用の立て直しを課題とすると表明している。 日本も第一波の時に、10万円の一律給付が行われた。日本のコロナ経済対策には、雇用調整助成金、事業存続のための持続化給付金、学生支援の給付金などがある。職を失った人の救済や学生の救済になっているが、不公平やそれを利用した犯罪もないとは言えない。また、これらの給付で倒産の数は抑えられている。しかし、各企業は巨大な負債を背負うことになり、地方金融機関も多額の債権を持つことになるが、倒産しないという前提のもとに貸し付けを行っている。財政再建を菅政権は放棄していると言わざるを得ない。何一つ将来計画が示されない極めて危険な対応である。 <政権のコロナ対策の無為>  安倍政権もそれを継いでいる菅政権も、コロナの対応は終息の目指す方法がなく、財政依存の給付対策である。他の諸国もほとんど財政依存の対策なので、財政力のない国は悲惨である。ただ、ベトナムや中国などはきついロックダウンや検査体制などで抑え込んでいる。コロナの広がりの根本は蜜である。人の往来を徹底的に抑えると実効再生産数が0.5~0.7に下れば、コロナは一時的に終息する。2週間の緊急対策でいい。今の緊急事態宣言は、仕事も続ける、人手も抑えないので、緊急事態宣言が3か月近く継続しかかり、経済的影響も極めて大きい。かつコロナは残り、すぐに次の波がやってくる。そんなことももう一年間も続けているので多くの産業分野で経済的なダメージは深刻となり、就学をはじめ社会はいびつになり、人々は疲弊してきている。安倍政権と菅政権のコロナを抑える対策をしていないというに近い。 また、2020年12月の閣議決定された総合経済対策には、コロナ対策が優先されているとはいいがたい。①デジタル改革、②グリーン社会の実現、③イノベーションの促進、などの未来志向の項目が並んでいる。このような対策が経済成長につながるかどうかは確実ではない。 結果、人々は苦境に追い込まれている。ワクチンの接種をコロナ対策の切り札と言いながら、遅々とした状況である。バイデン政権が50日で1億人の接種を実現したのとは対照的に菅政権は何もしていないに等しい。例えば、接種を早めるために、医者以外の看護士や薬剤師が摂取できるような法律枠の改正はできないのだろうか。ワクチンの危険性を唱える人々もいるが、とりあえず接種を早めれば、3か月以内で国民の大半が摂取されコロナが終息することが可能なではないだろうか。 <財政政策の欠陥> 財政支出は財政赤字に帰結する。財政赤字の増大はいくつかの欠陥を持っている。第一に、財政赤字は、増税に結びつく。イギリスでは2024年度に400億ポンドの増税が必要というという財政研究所の試算があり波紋を呼んでいる。バイデン政権は法人税の28%への引き上げを決定している。 第二の欠陥は、財政の硬直化である。財政赤字は、国債発行によって補われている。結果、国債費が増大し、有効な財政支出ができなくなる。有効な財政の支出に支障をきたすという財政の硬直化をもたらす。これ以上の支出が困難となり、景気対策やインフラ整備や社会保障、年金財政の行き詰まりの結果となってゆく。 <財政政策の危険性>  第三に、財政の危険性は、財政の硬直化に始まり、続いてインフレの可能性がある。インフレは国民生活を破綻させる。金融緩和による過度な資金供給は現在のところ株や有価証券、社債購入などになっているが、過剰な円の供給がやがてインフレにつながってもおかしくない。インフレは多くの国民の生活困窮の原因となる。財政政策で最も危惧すべき事柄である。 第四に、税制の破綻の帰結はデフォルトである。デフォルトは国家破綻になり経済はズタズタになる。国家の信用がなくなり経済運営が危機的な停滞をもたらす。何としてもこれらを避けるために財政健全化を目指していたわけである。コロナの財政膨張は、デフォルトの可能性につながるという最大の危険性を孕んでいると言えるのではないだろうか。財政健全化は日本でも政策の柱であったが、果たせていない。2020年にプライマリーバランスをゼロにする国際公約を結んでいたが果たせていない。逆に、国家債務はかなりのペースで増え続けている。 <金融破綻>  財政膨張の中で、金融破綻の危険性も潜んでいる。株価の過度な値上がりは、実体経済との乖離がはなはだしく、経済成長がない中で金融だけが膨張する結果となっている。税制に対する中央銀行の支援が金融を膨張させている。有効な投資先がない中で株や金融商品の購入に通貨が回っている。投機的な金融が富を手にして労働者や多くの企業が疲弊して、格差拡大が加速化している。コロナの見えざる禍である。 <コロナ対策としての所得政策の有効性>  財政依存よりも、一時的な所得政策をとることが、コロナ対策では有効なのではないだろうか。密を回避するための経済活動・社会活動の一時的停止をおこない、交通の運航をすべて止める。二週間だけである。同時に、賃金をはじめ、光熱費、家賃、の2週間お支払い停止命令を出すという内容である。すべての国民に対して、給与がないので2週間の最低限の生活費の給付する。会社は人件費と家賃負担がないので、存続できる。2週間の経済、社会などのすべての活動停止が行われるので、人出は皆無になり、蜜が消滅し、その結果、コロナを抑えることができる。それで2週間後にはすぐに警通常の生活・経済活動を再開すれば、負担は軽微である。 2週間で感染者は激減できる。職場も交通手段も知恵すすれば停止すれば、コロナは終息する。家賃と支払いを停止する特別法を作った緊急対策をすれば、コロナは終息する。私は、2020年3月にコロナ対策の私案を作った。このブログにも載っけている。 <コロナ対策は、一時的なものでなければならない。> 「ピンチを利用してチャンスに変える」「コロナと共存する」などといった発想は愚かである。コロナを利用して社会を変えること、社会制度を作ることは、危険性と歪みを生み出すだけである。コロナを抑え込み早期に終息させるという方策をとるべきである。ここでは、危機を利用してコロナに対応した社会に変えるという発想よりも、コロナを撲滅し正常な軌道での社会変革を考えることが健全な社会を作る道である。

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