国連改革提案

<内容> 1 国連を中心とした外交と現状の外交方針の継続 2 国連改革の提案 3 国連が国家創設の要件を明確化 4 人権と民主主義についての要件 5 日本が国連対策に関してとるべき行動

1 国連を中心とした外交と現状の外交方針の継続

日本外交の基本方針は、岸田文雄氏が首相に就任した時の会見でも、日米安全保障を基軸として進めるという方針が述べられました。安倍政権、菅政権からこの方針は変わっていない。防衛省の基本方針もそれに沿っています。野党もその方針を転換する提案はなされていません。 しかし、同時にこの方針には大きな危険性を含んでいることを指摘したいと思います。危険性というのは、米国を中心とした同盟の中に、日米安保もありますが、米国を中心とした協力体制・同盟は中国包囲網になっているということです。包囲網を強力に進め、中国を孤立化させる方針をとるとき、中国は独自の同盟や協力国を求めていきます。中国は、ロシア、中東の諸国、アフリカ諸国などのほかに、柔軟な国や国際機関への働きかけと圧力を強くしてゆきます。ロシアが一つの要です。ロシアは武器輸出を大きな産業としているので、世界情勢に対する危険は増大します。また、ロシアと中国は、いずれも核保有国で、核での対立ということでは北朝鮮、イランと並んで、危険性があります。例えばクリミア半島の問題では、ロシアは小型の核を使用する危険もありました。かつてトランプ大統領も小型核兵器を開発し、使用するという方針も出てきていました。核使用の危険性の可能性もありました。ロシアと中国は、国連の常任理事国であり、核保有を認められているということも、国連が機能しないということにつながっています。

世界情勢の変化の中で戦争勃発の危険性は、増大していると言えるのではないでしょうか。その危険性を解決するためには、日米安保を基軸とした外交では不可能であり、国連のような国家を超えた組織を基軸とした外交へ転換する必要があります。

 

アメリカの同盟関係では、アメリカはNATOを大きな要素としています。QUAD(インド、オーストラリア、日本、アメリカ)の協力体制、AUKUS(イギリス、オーストラリア、アメリカ)の同盟などは、アメリカを中心とした世界体制を模索するものですが、日本は日米安保を通じてその一翼を担っています。それは、戦争への準備という側面もあると言えます。現に、日本は中国の軍事増強や北朝鮮の脅威などに直面し、軍事増強へ向かっています。ロシアによるウクライナ攻撃があれば、世界戦争の危機につながることも否めない状況だと言えるのではないでしょうか。戦争は突如に始められるのが歴史の教えてくれるところです。

アメリカ、ロシア、中国の武器輸出が世界の軍事体制を左右しています。日本も2014年に安倍政権が武器輸出を始めてから、武器輸出国となっています。武器輸出は、世界の情勢によって紛争、戦争に繋がる可能性があります。

 当面、アメリカの同盟関係を維持することは不可欠でしょうが、同時にこの世界戦争の危険性を排除する必要があります。それには、世界平和の組織を国家から独立した勢力として、構築することを提案し、それを支援することが必要です。日本やまたこの方針に賛成する国が、国際連合が世界平和の組織として、国連外交を進めるのが望ましいのではないでしょうか。

2 国連中心には国連改革の提案となる。

 国連は、その構成メンバーが国家であり、人民ではありません。従って、国連は国家の外交の舞台となっています。国家は近代社会の成立以来、戦争の主役となってきました。そして二度の世界戦争の反省から国連が創設されました。国連は、国家の利害を超えて世界平和に実現できる制度にすることなくしては、戦争の危険性は存続し続けます。そして現状では国連は無力と言わざるを得ない状況になっています。国連の改革が必要です。

 安全保障理事会は、第二次世界大戦の戦勝国が常任理事国となった体制で、この五カ国は拒否権を持ち強力な勢力となっています。核保有もこの五か国に公式に認められている体制です。日本やドイツの常任理事国入りも議論されることはありますが、既得権を持つ国(五つの常任理事国)が自国の権限を縮小する行為は取らないのではないでしょうか。また、そもそも日本が常任理事国入りが意味あることとは思えないところです。むしろ、国連の在り方そのものを根本から変える必要があります。

 

国連への提案としては、まず新規約を作成し、各国の賛同と批准の提案を行うことから改革は始まります。新規約に批准した国は国連によってその国の安全保障を保証されます。それを実施するためには、国連が国家を超えた軍事力を持つ必要があります。そのためには、国連は常備軍を持たなければならない。新しい規約に基づいた国連活動の基本規定を明確化し、いずれかの国家がその規定に違反した時、話し合いの活動をして、そして場合によっては武力行使を含めた対処ができるようにする必要がある。武力面での治安の平安が訪れるとき、その後、平和維持活動に移行させるというになる。

現在の国連と違って、国連軍とそれを動かす国連軍統括本部は、国家から独立したものでなければなりません。国家の意図が入るところでは国連軍が外交の手段になる危険性があります。国連軍は列強の意図に左右されてはならないわけです。新しい国連規約によって国家を離れた国連軍を創設し、各国が軍事力を拠出するとき、平和が実現できると言えるのではないでしょうか。

世界の現状は、軍隊が国家に帰属している。軍隊の目的を侵略や外交の手段としての威嚇や抑止力ではなく、安全保障にあるとき、安全保障を国連にゆだねることで、国連軍を支持し、それとともに国家の存続を維持することができる。国連軍が新規約批准国の安全保障を担うということになる。このような国連の体制が世界平和への道と言えます。

国連軍は、現行の安全保障理事会や総会とは独立した、軍統括本部により運営されるべきである。現状の安保理と総会は諸国家の外交の場となっているので、それから独立した超国家で国際的な国連の組織にしなければならない。世界中に拠点を展開できるように編成される必要がある。 国連軍の創設には、各国が軍隊を拠出する。各国軍の10%程度から始めるという提案で規約への批准を提起するというのでどうでしょうか。例えば日本の場合、自衛隊の10%を国連軍に拠出し、自衛隊所属ではなく、国連所属とすることになる。国連軍ができて、国家の安全保障が確実なものとなるまでは、日本政府は現状を維持する必要がある。拠出の内容に関しては、調査委員会を立ち上げて検討することが必要だと思われます。各国の軍隊、人員と言語、兵器の種類、組織編成などを検討することが必要となります。

3 国連が国家創設の要件を明確化することで、多くの国の人々が救われる。

 国家機能の不十分と欠如によって、悲惨な状況を生み出している地域と国がある。その地域は経済が疲弊したり、物資が不足したり、仕事がなくなったり、人権が蹂躙されたり、という状況に陥っている。人々は生命の危機を含む悲惨を体験している。

新しい国連のもう一つの使命は、1.国家創設の条件を明確にし、2.それを支援する必要がある。新規約の中に国家創設条件移管する項目を入れることを提案したい。当然、国家の創設の認定を国連が行うことになる。国連おなかに国家創設局を設けることになる。国連軍がその条件にのっとった執行とその間の平和維持活動に関与することになる。

ミャンマー、アフガニスタン、シリア、ウイグルなど、多くの地域に国家の創設、秩序化が望まれる。人権や民族、宗教などに関して、国連が国家要件を規定する必要がある。民主主義や選挙は必ずしも世界中で確立されているわけではない。市民社会がもたらす正義と、宗教やイデオロギーがもたらす正義が、一致するわけではない。

 選挙制度をとっていない国も多い。軍事、武力が国家を作るというのが現実で、その武力を正義に変えないと国は存続し続けることはできないというのが歴史の現実でありました。アメリカ軍も国家の解体と崩壊のあと新しい国家創設を武力で行うという論理をもって世界の警察として活動してきました。古くは南ベトナム、そして近年ではイラクやアフガニスタンの政府にみられるところです。これらすべてが失敗に終わっている。国家建設に成功していないということは、アフガニスタン、イラクなどの戦争をとその後を見ても歴史が教えるところである。ネオコンの理論は、市民社会が出来上がっている国家、第二次大戦後の日本やドイツのような成功例から構築されたと思われるが、市民社会やその他の社会形態に関する理論的不十分さを持っていたと言えるのではないだろうか。現在のアメリカを中心とした、同盟でも同じようなことに留意する必要があります。

4 人権と民主主義についての要件

 

今の世界の国家体制のもとで、人権、民主主義、という原理を絶対の人類に普遍のものとして強制することは、世界の安定を損なう結果になりかねない。ウイグル、チベット、ミャンマー、シリア、ジンバブエ、かつての旧ユーゴ地域、など、そしてその他多くの地域で人権抑圧などが見られる。人権抑圧や民主主義の無視に関して、アメリカとその同盟国が干渉しても、内政干渉と受け取られたり、非難の応酬に帰結している。外交的対立を大きくするという作用を持ちかねない。国家が圧力をかけて人権問題をご意向に使うのではなく、むしろ国連にゆだねることが、人権や民主主義を実現できるものではないでしょうか。それには国連が人権や民主主義の意義を明確にする必要がある。特に、市民社会の機能と市民社会の歴史と各国の近代化の歴史を顧みることで、国家が民主主義をどのように実現するか、あるいは国連として容認できるかという手法を明確にする必要がある。

人権擁護のシステム内容を明確にし、人権擁護を実現できる国連システムに関する検討委員会も組織化する必要があるかもしれない。人権や民主主義や選挙制度は憲法に関わることなので、新規約の批准時に、国連憲法審査委員会で各国の憲法の検討が行われることになる。憲法審査委員会も国連軍統括本部の重要部局となるべきである。

軍備や核兵器に頼って国家を構築しようということが世界中に多く見られるのが現状である。人権も民主主義も選挙制度も、近代市民社会の中で育ったものである。市民社会がいきわたっていない地域や国家が世界には多くある。

社会主義は必ずしも選挙を肯定しなかった。イスラム教はイスラムの教えのもとにあり、それを世界の国々に普及させるという意図がエジプトのモルシ政権、トルコのエルドアン政権、イラクの政権、サウジアラビアの政権、その他、ハマスやフーシ派にもある。そして北朝鮮や中国、ロシア、その他多くのアフリカ諸国にも市民社会的原理よりも、権力を優先させる志向がある。部族社会も必ずしも人権民主主義選挙を尊重するとは限らない。武力や経済制裁で、人権、民主主義、選挙制度を構築し、できないときは武力に訴えてそれらを実現しようという方策は戦争や紛争をおよび起こす結果につながりかねない。

肝要なことは、市民社会を成長させることである。その上で、市民社会的論理を広めてゆくなかでこれらの制度を創設してゆくという試みがなされる必要がある。各国の改革を市民の手で行ってゆく必要がある。アラブの春にはそのような側面もあったが、あまりに市民社会は未成熟であった。 差し当たっては戦争をしない世界の体制を構築する中で、人権も民主主義も模索する必要がある。選挙も現行の世界の選挙制度に問題がないわけではないので、再検討が必要である。

5 日本が国連対策に関してとるべき行動

 

日本は政府として国連に改革提案を出すことはできないでしょうか。それが国連中心外交となり日本外交の基軸とすることができます。日米安保体制を当面維持しながら、世界の安全保障の体制を国連の機関を通じて実現するという日本の外交政策の基軸を据えた道となる。

 原案を作成する機関として、外務省の中にそのような部局を設置し、また特別諮問委員会を設置する必要があると思います。それを中心に国連への提案の原案を作成し、内閣で検討することが次の段階となります。国会の承認も必要かと思われます。その上で、世界中に働きかけるのはどうでしょうか。日本のリーダーシップが重要です。日本は平和憲法を持っているので憲法改正に手間取ることなく、進めることができるのではないでしょうか。

 まず、世界の国連軍の一つを日本の自衛隊の10%を国連に提供し、また事務局スタッフを外務省本省2500名のうち、10%250名を拠出して国連、統括本部に拠出する。配属するのではなく、拠出して10年後日本に戻る。その間は国連が給与などの費用を負担する。

世界中に、国連軍本部とともに支部を20か所の軍事拠点を構築する。その日本支部を提供するところから始め、世界に呼びかけるというのはどうでしょうか。

 

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