ウクライナ戦争を終わらせる  メールマガジン8号

国連改革 NGO 卵の会 メールマガジン  第8号   2022.12.9

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ウクライナ戦争は、終わりが見えない。終わらせ方を模索してみたい。そこに国連の責任と国連の抱える課題が見えてくる。

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*今回第8号は<ウクライナ戦争を終わらせる>というテーマです。

■世界の現状とニュース ◆テーマの解説・考察 ◇歴史的考察 ❖卵の会の主張

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■<和平の可能性>

 ロシアによるウクライナのインフラ施設への攻撃が続いている。停電や電力不足が発生している。ウクライナはドローンによるロシアへの攻撃でロシア西部の飛行場や石油貯蔵施設を攻撃した。モスクワ南東のシャギレボ空軍基地、南部サラトフ州のエンゲリス空軍基地をドローン攻撃した。バイデン大統領は、ウクライナに戦線の拡大を自重するように要請している。

 ウクライナ戦争の長期化、拡大は進んでいる。和平を求めることはゼレンスキー政権にも、プーチン政権にも見られない。アメリカや国連の和平提案を望みたい。日本政府でも、和平への道を開くことはできる。どの国でも和平提案の原案を作成し、共同提案国を外交的に増やし、和平を実現することは可能である。それによって、ウクライナとロシアの人々の命が救われるだけではなく、人類全体が救われる。和平提案を提案すると一歩進むことができる。国民が悲惨な状態になることを相手国のせいにして、相手国を非難するという状況では、国民の悲惨は終わらない。

■ウクライナ軍は9月ハリコフ州の要衝イジュームを奪還した。11月にヘルソン市を奪還した。しかし、ウクライナ軍がヘルソンからドニプロ川を越えて進軍することは極めて困難だという。橋が破壊されてしまっている。その後、ロシア軍のミサイル攻撃は激しさを増し、インフラ施設の攻撃が行われるようになっている。「ホロドモール」(大飢饉)という言葉が使われ始めている。ロシアのインフラ攻撃を、旧ソ連のスターリンの統治下で1932年から33年に起きた人為的に飢餓を発生された民族大虐殺(ホロドモール)になぞらえられている。ウクライナの人々の暮らしが破壊されて、生命の危機さえ忍び寄っている状況である。

 戦火を逃れるために、ヘルソンのウクライナの人々も、予備役徴兵の可能性のあるロシアの人々も避難をしている。戦争をやめようという努力を行うことが重要である。ウクライナ政権の姿勢は、引き下がることなく、勝利するまで戦うとしている。ロシアの政権も同じである。結果は、戦争の長期化・拡大・激化しかない。

■戦争拡大の政策が広がっている。世界の国々は、防衛費と軍事体制強化に動いている。ウクライナはポーランドにミサイルを着弾させた。最初否定していたが、米国などの情報から隠し切れないと判断し、発射したと声明を出した。ポーランドが攻撃されれば、NATOが対ロシアの戦争に踏み切る。3月の段階から、ウクライナは各国に戦争参加を呼び掛けるプロパガンダを行ってきた。自由・民主主義を守るということで欧米はウクライナ支援を続けている。NATOも米国も一定の線を引いている。核戦争と第三次世界大戦に至らないという線である。その中で、ウクライナはロシア本土へのドローンの攻撃が始まっている。今後の成り行きには暗雲が立ち込める。和平に早急に動くことが必要である。

◆ <ウクライナ戦争和平案 私案>

 ウクライナ戦争の和平案を示してみよう。重要なことは、ウクライナ戦争の原因を明確にして、それに対処できる案であることである。

1 ロシア軍の撤退。親ロシア派武装勢力の武装解除、ウクライナ軍の武装解除

2 ロシア人居住地区とウクライナの領土に関し、領土問題解決のための委員会を設立し審議する。委員会には、国連事務局、有識者、ロシア政府、ウクライナ政府、米国政府、NATOなどから委員を選出する。

 3 NATOの新規加盟を2年間停止する。ウクライナとロシアの周辺の8カ国(エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア)の他の地域からの駐留兵力・武器を3年間全廃する。ウクライナ周辺地域(国境から30㌔㍍以内)からロシア軍、ベラルーシ軍の撤去。国連協力のもとNATO改革委員会を設置する。

 4 国連の平和維持活動PKOの中にウクライナの管理を移す。

 5 経済制裁の段階的な全面解除

 

この案で最も重要なことは、ロシアもウクライナも米国もNATO加盟国も、賛成できる案であるということである。ロシアも同意できる時、安全保障理事会で拒否権を発動されることはない。審議を経て修正されて、和平合意を安保理で実現することが、多くの人々の命と、世界経済の分断を是正することにつながる。

 ウクライナ戦争は、まず武装解除を実施する(第1項)。ウクライナ戦争の直接の原因となっている二つの問題(ロシア系住民の居住地区の問題、NATOの東方拡大)を解決することができる(第2項、第3項)。治安維持、条約履行など国連の管理を設定する。(第4項、第5項)これらの問題を根本から解決するには、国連はさらに踏み込んだ検討、調査審議委員会を設立し、国家の成立条件や軍事同盟に対する取扱いなどの一般的検討が必須である。それは、今後、国連の活動の中で大きな役割を占めることになる。

◆<世界経済のインフレと分断を是正する>

 和平によって世界経済の苦境の多くが解消される。世界経済全体でインフレが進行している。その原因の大きな部分が、小麦と石油の価格高騰である。アジアでも小麦消費が伸びているが、輸入依存度は高い。ほぼ100%の輸入依存度の国が、マレーシア、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、スリランカで、日本も90%である。国連、トルコ、ウクライナ、ロシアの合意でウクライナからの輸出が再開されたが、10月29日にロシアは一旦停止している。理由は、1.食糧危機のアフリカ、中東諸国へ送られずに、トルコ、中国、韓国、ヨーロッパ諸国などに送っていたこと、2.ロシアの輸送船などがウクライナの攻撃にあったこと、3.ロシアからの輸出が実現されていないこと、などである。背景に国連の管理の不手際・不十分さがある。

 アジアは小麦生産が低い。日本も小麦生産を十分行っていない。小麦消費量は、増え続けている例えば、フィリピンではこの10年間で2倍になった。ハンバーガー、スパゲティの消費が伸びている。即席ラーメンも日本お1.5倍の消費量である。

ロシアの原油価格の上限を60㌦に設定する制裁が発動された12月5日から発効している。世界の物価高騰に拍車をかけるだけで、効果は望めない愚策である。インドは、ロシアの石油の輸入を5倍以上に増やしている。中国も1.5倍である。これらの国が大幅な輸入をする中で、効果は期待できないし、政策自体が無意味である。ロシアは上限設定国には輸出しないと声明を出している。

◇歴史 <ミンスク合意>

 今年2月のロシアによるウクライナ侵攻の起点となるものに「ミンスク合意」がある。2014年に始まったウクライナ東部紛争を受けて、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの首脳が、2015年2月にベラルーシの首都ミンスクでまとめた。親ロ派武装勢力とウクライナ軍による戦闘の停止など和平に向けた道筋を示した。内容は、①ウクライナ東部での包括的な停戦、ウクライナからの外国の部隊の撤退、②東部新ロシア派支配地域自治権を認める「特別な地位」を与える恒久法を採択、③ウクライナ政府による国家管理の回復などである。

 この合意は新ロシア派武装勢力、ウクライナ軍の双方に守られていない。国連の介入によるPKOを設けるべきであった。PKOは当事者の依頼が必要という点で、PKOそのものに欠陥があるが、ミンスク合意自体に国連の平和維持活動を構成すると明記すべきであった。そのため今日のウクライナ戦争に繋がっているといえる。 侵攻前夜、2022年2月2日にも、プーチン大統領は、ウクライナが慢性的に「ミンスク合意」を妨害していると訴えている。ミンスク合意のような国際的な取り決めは、国連の場で強制力を持ったものにしないと新たな紛争が起こってしまう。ウクライナのゼレンスキー政権はミンスク合意自体に否定的である。この合意がロシアの意向が反映されすぎているとするものである。とすれば、それを国際法とすることも片手落ちである。国連の関与が必要であったと言えるが、今となっては、一から調査審議委員会を設定し、ウクライナ全域に関して、新しい案を国連の仲介のもとに作るべきである。

◇ <ブタペスト覚書> 1994年12月5日、ロシアが米国やイギリスと結んだ「ブタペスト覚書」がある。ソビエト崩壊時にウクライナに残った核兵器をロシアが引き取る代わりに、ウクライナの主権を尊重するという内容である。ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナが核不拡散条約に加盟したことに関連して、協定署名国(アメリカ、ロシア、イギリス)がこの3国に安全保障を提供する、という内容のものである。ウクライナ側としても核兵器の維持に十分な技術能力がなかったという事情もあった。ウクライナ政権はロシアにも米国にもこの覚書を主張すべきであるが、ゼレンスキー政権はこの覚書を「効力がない」としている。

 このような国際条約には、国連が関与し、効力を持たせなければ国連の存在意義がない。ウクライナ戦争に関しても、国連がなすべき役割を果たしていない。今後、ウクライナ戦争の終結にあたって、戦況が左右する。戦争の状況によって和平内容が左右される。しかし、戦争を終わらせるためには、条約の有効性が担保されなければならない。国連が関与して、調査審議委員会の十分な検討は不可欠である。国家の都合で人々が犠牲になることを終わらさなければならない。  

❖ <ウクライナ和平に伴う国連改革の必要性>

 ウクライナ戦争の和平は市民からの動きもできる。それが世界の平和につなげたい。  市民の声 ⇒ 日本政府への要望 ⇒ 日本政府から国連安保理への和平案の提起 という道筋である。

和平案の要点は  ・安保理でロシア・中国が拒否権を発動しないような案であること  ・即時停戦に結びつくこと

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【卵の会 活動ニュース】

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