日本の安全保障体制 メールマガジン  第9号 

国連改革 NGO 卵の会 メールマガジン  第9号   2022.12.15

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日本は防衛3文書を策定し、防衛体制を一新しようとしている。防衛費は、5年で43兆円となり、GDPの2%を念頭に進められている。これで本当に日本の安全保障を保つことができるのだろうか?「国連との関係を中心とした安全保障が日本の安全を真に保証するものである」、という意見を、現在の日本の安全保障体制に対置して考える材料を提供したい。

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*今回第9号は<日本の安全保障体制>というテーマです。

■世界の現状とニュース ◆テーマの解説・考察 ❖卵の会の主張

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■<防衛3文書>

 防衛3文書(国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画)は中国の軍事行動への対応を前面に示した。ロシアと北朝鮮と中国が日本の安全保障に対する脅威と捉えられる時代となっている。2013年の安保戦略で「懸念」としていた表記を「挑戦」に引き上げている。中国は30年間で軍事費を40倍に増やし、中国の「挑戦」と「脅威」を抑止するための防衛手段を獲得する必要があるとしている。

専守防衛という立場は、国連の立場と一致している。ただ、今回の防衛論では、反撃能力の保有を新たな防衛力強化の柱にしている。そのための長射程のミサイルを導入する。国産型の改良と米国製の巡航ミサイル「トマホーク」を購入する。音速の5階以上で変速軌道を飛ぶ超音速誘導弾を開発する。潜水艦発射型も開発する。 軍事装備には、空母、戦闘機、防衛ミサイル、サイバー、攻撃用無人機、科学技術開発などが必要になる。サイバー、宇宙、への対応も打ち出している。イタリア、米国と3ヵ国での共同開発も進められている。安全保障を目的とした計画と日本の防衛方針を専守防衛に徹することが重要である。

■<台湾有事:対中国>

 台湾とのかかわりが日本の安全保障に大きな影響を持つ。自衛隊や在日米軍が民間と一緒に共用空港の自衛隊使用の規定を盛り込む動きになっている。先島諸島から10万人の非難を見込んでいる。港湾は住民避難の拠点ともなる。日本は台湾の国家承認をしていない。しかし、実質的に台湾に対して友好的である。台湾の国家としての存立についても、国連で審議されなければならないが、中国の強い意向が反映しているので、宙に浮いた状況が続いている。

 2022年の予算では中国の防衛費は、1兆4500億元(約29兆円)である。防衛に関しては『攻者3倍』の原則があり、攻める側は守る側の3倍の兵力を投入する必要がある。中国29兆円に対し日本10兆円にするというのは、兵力均衡になる。

 中国海軍向けに駆逐艦、砕氷船、上陸用船舶が建造されている。江南造船である。航空母艦の建造も進めている。特に上陸用船舶は、台湾問題を考える脅威と言える。江南造船の建造する空母は、「003型」(319㍍)と見られる。世界最大の空母である。中国空母の4隻目である。

■<防衛装備>

海上自衛隊の護衛艦「かが」は空母並みの機能を持つ。「いずも」はF35B戦闘機を搭載できるようになる。長さ248㍍でかつての戦艦大和(263㍍)に近い。日本は事実上空母2隻を持つことになる。中国は「遼寧」に続き、2019年12月に「山東」を建造し、今年6月に空母「復権」が潜水した。3隻目である。尖閣諸島をにらみ海軍力を増強しようとしている。

米軍はフィリピン軍が共用できる施設などの拠点を増やす見通しだ。12月6日、フィリピンのクラーク空軍基地に自衛隊のF15 戦闘機2機が到着した。空港自衛隊が戦闘機を海外に派遣するのは、米国、オーストラリアに続いて3カ国目である。フィリピン軍と「部隊間交流」を行う。NATOとの連携、イタリアとの共同開発、韓国、オーストラリアとの連携など、友好国との共同防衛が進んでいる。

■<財政難と他国との共同防衛>

 防衛3文書の改訂に伴って、政府は苦しい行き詰まりに直面している。防衛費の捻出である。財政難の中で防衛費・軍事費を増大させようとすると、無理が来る。日本は政府債務が巨大である。GDP比で260%を超えた。国債増発は財政硬直化をもたらし、続いてインフレをもたらす。財政負担は庶民の生活を圧迫し、企業への締め付けは景気停滞をもたらす。やがて政権が存続に反対の声が大きくなる。 防衛費は巨額の軍事品をアメリカから買うことになる。自衛隊員の給与も大きくのしかかる。これに対し、中国は常に経済と国防の建設を一体のものと考えている。

◆財政の面でも、国家の安全保障の面でも、国連との安全保障条約を策定し提案して、進めることが望ましい。日本の安全保障は、第一に自衛隊である。第二に日米安全保障条約に基づく米国の軍事力である。そして第三に、世界の体制の中でアメリカの同盟諸国との共同防衛の外交である。しかし、いずれも安全を保障するものとはならない。軍事力は一つ間違えば、戦争になる。

 国連との安全保障条約を結ぶことを提案したい。「国連日本安全保障条約」である。

1 日本は、軍事費、兵士、軍備兵力の10%を国連軍に拠出する。 2 国連は、国連軍を創設し、日本に関する共同の安全保障体制を構築する。 3 日本の自衛権、集団的自衛権はそのまま保持され、その上に国連との共同安全防衛体制が構築される。 といった内容になる。この安全保障が機能するとき、日本国民の安全は確実に保証される。そのためには、是が非でも必要な条約である。 国連軍(常備軍)の創設が必要になる。国連軍は、第一に契約国との安全保障を任務とするが、第二に、治安維持軍を構成するという普遍的任務を担うように発展させることが、望まれる。  

◆<自衛>

 国連憲章で、現在では戦争は違法とされている。しかし、その戦争というのは、侵略戦争で、自衛のための戦争と集団的自衛のための戦争は、合法となっている。集団的自衛に基づく戦争ということではあらゆる戦争が合法になるような言い訳ができるようになっている。ウクライナ戦争でも、ロシアの侵攻はNATOの東方拡大を理由に合法だという論理も立てることができる。集団的自衛の制約を憲章に盛り込まないと、戦争放棄を実現することはできない。  

◆<10%国連移譲案>

国連日本安全保障条約は、すべての兵器・兵士・防衛費などの10%を国連お提供するということが第一要件である。兵器が削減されても、国家の90%の戦力は持ち得るだけではなく、国連軍との共同防衛ができる。自衛・国防はその中で可能である。第二に、国連に移譲すると国連との間に、国連安保条約を締結するということが実現できる。そのことで、条約を結んだ国は国連軍との共同安保が可能になり、共同の国防体制を築くことになる。自衛隊と国連軍の共同日本防衛体制である。 兵器を削減することが、戦争を回避することの唯一の道である。いま世界は、軍備を増強し、抑止力に頼ろうとしている。抑止力は、外交と戦争回避の唯一の手段となろうとしている。ただ国際平和への唯一の道は、軍備削減を行うことである。「一方的な軍縮」はかつてペレストロイカを進めたゴルバチョフがとったが、今の情勢では危険性がある。歩調を合わせた軍縮が国連のもとに行われることが安全な道ではないだろうか。

❖ <国連日本安全保障条約を>

 日本の新安全保障のためには、1.自衛隊 と 2.国連軍 だけにするのがいい。外交的な画策や米国に依存すると、敵を増やすことになりかねない。国連安全保障条約は、世界平和を念頭にした安全保障政策であり、真の国家安全保障を獲得することができるようになる。

 1 日本の防衛費の10%を国連に拠出する。

 2 国連軍が日本の防衛を共同で行う。国連は、核軍縮、世界の軍縮、世界の紛争解決とともに国連安保条約を結んだ国の安全を保障する。

 3 世界の国々が国連との安全保障を結ぶようにすることで、国連軍が強力なものとなるように、日本も外交的努力を行う。そこには国家間の対立が後方に退いてゆくことになる。国連改革の一つの目玉となる。

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