新しい国際関係

国連改革 NGO 卵の会 メールマガジン  第13号   2023.1.23

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ウクライナ戦争は終わりが見えないまま、年を越しました。世界の分断は恒常化しようとしている。地域的な戦争の火種は未解決のまま多い。ミャンマーやパレスチナ、イエメン、アフガニスタン、ブルキナファソ、ジンバブエなどでは抑圧と紛争が続いている。原子爆弾の使用の危険性も孕んだままの状況だ。

 戦争が広がらないこと、勃発しないこと、核使用がないことを祈りながら、永続的な世界平和への一歩を踏み出したいと思います。

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*今回第13号は<新しい国際関係>というテーマです。

■世界の現状とニュース ◆テーマの解説・考察 ◇歴史的考察 ❖卵の会の主張

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■世界の勢力は、ウクライナ侵攻のロシアに対する国連での非難決議において鮮明に表れた。西側陣営(G7、EU、豪州など)、中立パワー(インドネシア、インド、ブラジル、メキシコ、サウジなど)、西側への対抗勢力(中国、ロシア、イランなど)。単にグループ化しているのではなく、外交的な関係とそれぞれの論理を持っている。ロシア制裁・ウクライナ支援は欧米中心の国際関係で是認されても、世界の国がそれに同調しているわけではない。新しい外交構造が生み出されている。反米の国も世界中に多く、西アフリカ諸国を中心に反フランスの国も多い。植民地主義、新植民地主義の残存がある。中国、インド、トルコ、南米諸国などの立ち位置も微妙で、それぞれ独自の主導権を持とうとしている。

昨年11月15日・16日のG20のバリ島での首脳会議では、ロシア非難の宣言を打ち出した。議長国のインドネシアとインドの世界経済を見据えた外交努力からできた宣言である。食糧やエネルギー危機などへの影響と戦争がもたらす世界への悪影響がロシアへの不満が強くなったものと言える。ただ、具体的なロシアへの制裁には至っていない。また、和平への努力もないという点では、ただの非難声明に過ぎず、対策は食糧問題などへの対処にとどまる。今後、ロシアとウクライナが抱える問題を根本的に解決する和平案に至るような提案を望みたいところである。

■ 昨年、インドは、ロシアからの石油の輸入を11倍にし、日量94万バレルとなった。国別では、ロシアからの輸入が、一作年の1%未満から昨年は22%になっている。ロシアから輸入した石油をアメリカに輸出しているという観測もでている。ロシアのインド依存は高い。そして、インドは「グローバルサウス」の中心となろうとしている。インドは、人口が23年には中国を抜き、GDPは英国を抜く。さらにGDPは、2060年には日本を超え、世界3位に浮上すると予測される。

 22年9月モディ首相は、ウズベキスタンでプーチン大統領会った時、「今は戦争の時ではない。」と言い放った。世界の秩序に大きな役割を担おうとしている。ブラジルのルラ新大統領も、ロシアのマトビエンコ上院議長との会談で「ブラジルは平和を望んでいる。関係者が紛争の終結に向けて共通の土台を見つけることを望む」と述べている。BRICSから新しい国連・国連改革への呼びかけにつながる枠組みを模索すべき時である。もはや、P5と言われる常任理事国では世界の安全保障の枠組みは作れない時代になっている。多くの人が国連への失望の中で国連の改革が必要であることを実感しているのではないだろうか。その声をくみ取り、国連改革の具体案につなげることが世界の平和を実現する道ではないだろうか。

 

■アメリカは多国間主義を尊重してきたが、総会での小国の多数派にたいして国連離れの感覚を持つようになってきていた。それを如実に表したのが、「ブッシュドクトリン」である。2003年のイラク戦争でアメリカは、多国間主義を排し、単独行動主義をとった。ブッシュドクトリンと国連主義の軋轢の中で、国連の役割が弱くなってきている。

そして、今、ロシアも国連を無視している。国連の場では、国際世論に対して意見を述べる形で国際社会への関与と外交を展開している。しかし、根本的には単独行動をとりながら、友好国と協力しようとしている。

■世界は主導権を取ろうとする覇権主義的外交の時代と言えるような様相である。中国は一帯一路を軸として、世界の主導者となろうとしている。インドもグローバルサウスという会議を作り、主導権を握ろうとしている。ブラジルは、南米諸国の指導者となるという意図のもと、BRICSに関わっている。アフリカの主導権ということも、かつてはカダフィ大佐が目論み、そして今、南アフリカが指導力を持つべく、BRICSのメンバーとなろうとしている。もちろん、欧米諸国も軍事力を増強しながら国家外交を軸に動いている。世界の強国は、先進国ということではなく、人口、国土面積、需要の大きさ、資源ということがクローズアップされてきている。

■ 世界は、第二次世界大戦前夜に似てきていると言われる。しかし、第二次世界大戦の時代は、植民地と先進国の帝国主義があった。現在は植民地が否定されている時代である。そして、先進国が世界を指導するという時代も終わろうとしている。G7とはもともと先進国首脳会議であった。19世紀末から20世紀にかけて先進国はヨーロッパであり、シュペングラーの「西洋の没落」ということが時代の変化を表そうとしていた。しかし、依然として世界はヨーロッパであり、そこに日本が食い込んできていた。米、英、独、仏、伊、加に日本が、世界の主要国であった。

今、世界はG20の時代となり、それはもはや先進国首脳会議ではない。大国の集まりと言える。特に、BRICS諸国はそれぞれの覇権と指導力をもち、世界のリーダーになろうとしている。その思惑は、外交を主導する時代の流れとなっている。中国、ロシア、インド、ブラジルに南アフリカを加え、それぞれの地域の主導的な役割<を担おうとしている。BRICSは、G7とは本質的に異なる。人口、国土面積、資源を基礎として、地域覇権を握ろうとしている。

日本は、G7の議長国となり、国連安全保障理事会の非常任理事国に就任した。そして、ウクライナ侵攻に対し、G7の「結束」を訴えている。主権と領土の一体性、国際法の原則堅持をG7諸国に対して訴えているが、欧米中心のこのような考え方が、古い戦後の国際関係の枠組みと言わざるを得ない。世界から取り残された外交になってしまうことは明らかである。G7、NATOの結束は、戦争を助長する結果しかもたらさないことも明白である。核廃絶も空虚な文言に終始しそうである。しかもこれまでの日本の外交力は、政府開発援助(ODA)が武器であった。そのODAは、半減している。そしてODAの枠組み自体が「戦後復興」という枠組みの中にある。日本は国際関係の変化を踏まえ、世界が協調できるような新しい外交方針を打ち出すことで、G7や安保理自国の役割を活用した改革を呼びかける外交をすべき時である。

■イスラエルとアラブ諸国の関係も変化し始めている。UAE、バーレーン、モロッコなどが、イスラエルと手を握り始めている。イランとの対立の中でUAEに、イスラエル製のミサイル防衛システム「バラク8」が配備された。スパイ機関の協力も進む。イスラエルのモサドがバーレーンとの情報協力で合意した。パレスチナ問題、イスラム世界の国家関係が変化を迎えている。サウジアラビアとの接触も始まっている。しかし、重要なことは、軍事的協力や国際関係の協力が単に軍事的・外交的協力から、軍縮を巡る平和協力へもたらされる枠組みに代わることである。私たちの国連改革への運動は、その段階の萌芽を見出してゆかねばならない。

■ 世界経済フォーラム(WEF)ダボス会議が1月20日に閉幕した。分断の中でグローバルなサプライチェーンや地球規模の問題に対処することを目指している。気候変動、食糧問題、人口問題、など、地球規模の問題に世界の地政学上の対立がのしかかっている。三菱重工業の宮永会長は、分断と亀裂の情勢の中で、企業は気候対策に、最大限の努力をしていることを理解する必要があると述べている。対立ではなく協調を強調している。ダボス会議の主流は、協調を願う動きであり、国連の立場に通じる動きにつなげる枠を模索したいものである。 自国生産にこだわれば、悪しきインフレの下地を作ることになる。1980年代半ばから2010年代に続く低価格化・デフレの波の中には、グローバル競争の経済の力によってもたらされていたという側面を忘れてはいけない。そのデフレは、経済発展と豊かな生活にも結び付いていたのである。 2022年は、中国とインドがロシアとの貿易を急拡大させた。中国は原油の輸入を増大させた。集積回路の輸入も2.4倍に急増させた。ロシアは20年に半導体の6割近くの供給を中国に依存していた。今、中国やインド、トルコなどからロシアに半導体が輸出されることを、米国は、警戒している。しかし、問題は半導体貿易ではなく、ロシアの軍事産業軍事体制そのものである。その軍事化を止めるということは、アメリカという一国の覇権で実現できるものではなく、国際的な協調に基づく、世界を束ねた軍事技術の管理によってしか実現できないのではないだろうか。国連の役割を軍縮に関して強化することが戦争を止める道ではないだろうか。

 

■ 中国はロシア侵攻後、ロシアに接近する路線をとってきた。人民通貨の強化、米国との対立、ロシア市場のもたらす利益などが、中国の思惑と言える。インドやトルコ、マレーシア、アフリカ諸国、旧ソ連地域の国々など、ロシアよりの姿勢をとっている。その主な視点は、「自国の利益」ということである。

◇(国連の成り立ち)世界は国連の論理を無視し始めている。一部の国が、多国間主義という国連の発足時の精神を尊重しようとしている。G7を中心とした国々である。国連は、第二次世界大戦の戦勝国が、二度と戦争を起こさないための組織であり、これら連合国が世界の安全保障で主導的な役割を担おうとする組織であった。連合国のP5(米、英、仏、ソ連、中華民国)が常任理事国となり、安全保障理事会を牛耳る体制である。小国の立場を反映できるものとして、総会がある。そして事務総長は、大国を避けて選出されるという暗黙の了解があった。それで、世界のバランスを取り多国間主義という秩序を目指そうとする組織となっていた。そして、世界の強国が変化する中で、その国連の役割は、意味を失ってきている。

◆ ロシアの切り離しは、欧米とその同盟国の論理である。その結果、世界のGDPの成長率は低迷し、予測は下方修正されている。ロシアからの西側企業の撤退や輸出停止は、ロシア経済に打撃を与えているが、制裁漏れも多くある。特に、制裁対象品目の中で半導体は大きな要因である。TSMC、インテル、日本のロームなどが、禁止対象である。しかし、UAEやトルコがロシア向けのハブセンターとして機能しているという観測もある。ルーブルも対独で強い通貨の一つとなっている。しかし、2~3年ののちにロシア経済が技術後退になる逆産業化を経験する可能性がある。ロシア制裁が「罰を与える」ということがクローズアップされるとき、戦争が拡大し、長期化する。そして世界の衰退、共倒れの危機に直面する危惧もある。

◆軍拡、主導権を持とうとする大国の発想が世界の国際関係の現状だと言える。国連を度外視し、覇権主義から地域的な紛争になりかねない状況が生まれている。和平の原則を打ち立てていくよう国連が動く時、世界は新しい時代を迎える。今の国際情勢の中で国民を守り、経済活動をスムーズに行うことが、現在から未来に至る国家の役割である。軍縮などの国際的協調を求める動きを人々の動きを呼びかけることが、世界の安定と経済の繁栄にもつながる。

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【卵の会 活動ニュース】

❖ 卵の会の会員募集を呼びかけました。少し、協力者が集まりました。

❖ 次の活動の呼びかけを検討しています。①メールマガジンの発信、②講演会、③学習会、④日本政府への請願書、⑤請願のための署名活動、⑥SNSでの呼びかけ、などを企画しています。

                                              

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