国連はどうすれば機能できるか

国連はどうすれば機能できるか

メールマガジン  第15号   2023.2.13

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国連は機能していない。世界は軍事対立の様相を深めている。同盟が増え、共同軍事訓練が頻繁に行われ強化されている。武器が高度化し、核兵器をはじめ、多くの先端兵器が開発される中で、軍事増強して自国を守れるのだろうか。同盟や共同軍事訓練で自国を守れるのだろうか。抑止力に頼ることは安全保障になるのだろうか。

むしろ戦争への危機が大きくなっているだけではないだろうか。方向転換が必要である。国際的な平和機関を構築することが唯一の平和への道ではないだろうか。

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*今回第15号は<国連はどうすれば機能できるか>というテーマです。

■世界の現状とニュース ◆テーマの解説・考察 ◇歴史的考察 ❖卵の会の主張

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■オーストラリア空軍が主催し、米、英、独、日など17カ国が参加する多国籍軍事演習「ピッチブラック」が昨年、8月19日から9月8日まで行われた。戦闘機による戦闘を想定した大規模訓練である。

■ EUは、元来、通商や競争政策などを中心とした経済的な共同体である。プーチン大統領もウクライナがEU加盟申請をしたとき、経済的な共同体で脅威ではないとした。しかし、今、EUは防衛・安全保障分野の統合を徐々に深めている。兵器の開発や共同調達や他国の軍事訓練に着手してきている。EU設立の意図には、ヨーロッパを戦場にしないという理想もあったが、今日では別の国家間の対立に直面している。ウクライナ向け軍事訓練をポーランドとドイツで昨年11月から始めた。2年間で1万5000人規模を対象とする。アフリカのニジェールの軍事訓練も実施している。EUは、不整合と組織の複雑さが、制度的欠陥となっているといえる。組織的に2重国家となり主権すらもはっきりしない中で、加盟国の利害で動く共同体となっている。税制や財政の課題も山積している。混乱と戦争時の不整合の危険がないとは言えない。「何のためのEUか?」という原点の問いかけが必要である。

❖ EUが軍事機構となることは、EUの創設時にEU軍という考えはあったが、EUの理想の中にはヨーロッパを戦場にしないということもあった。そして、今、EUは理念を共有しない諸勢力と軍事対立に踏み込む可能性も出てきている。むしろ、EUという共同体自体が存立意義を問われることになっていきそうである。いずれにしても、EUが軍事機構となることは、避けるべきではないだろうか。国連憲章の第8章の地域取決めに基づく軍事同盟組織は世界を戦争に導きかねない。国連のような世界機構が世界の警察としての役割を担うことが重要である。

◇ 1948年国連パレスチナ休戦監視機構(UNTSO)が作られた。PKOの萌芽である。国境や停戦ラインの監視という任務であった。1956年に、第一次国連緊急軍(UNEF)中東地域に作られ英仏イスラエルの軍が撤退する条件を作った。その時のハマーショルド事務総長とピアソンカナダ外相の努力はPKOの創設に至るものと高く評価される。

 そのときPKOの三原則が作られた。①当事者の合意に基づく。②中立を守る。③武力行使は自衛のための必要最小限にとどめる。というものである。現在も国連の治安維持活動の原則として生きている。

◆しかし、この原則自体の見直しが必要な時期に来ているのではないだろうか。この原則のために、治安維持活動に制約がかかって国連が十分機能できないという事態を生み出しているのではないかと思われる。

 

■ 今年、1月31日、ブリンケン国務長官はイスラエルとヨルダン川西岸ラマラを訪れ、パレスチナ自治政府のアッバス議長と会談した。イスラエルとパレスチナの「2国共存」を支持する立場をバイデン政権は取っている。ガザ地区と西岸地区がパレスチナ自治政府の行政地区となっているが、ガザはハマスが統治し、西岸地区はファタハ(パレスチナ民族解放運動)を中心とした政権で、2つの地区は別の政権であると言える。必ずしも統一国家と言い難い。西岸地区はイスラエル軍が26日襲撃し、翌日エルサレムのシナゴーグで銃撃事件が起きている。ブリンケン氏は30日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談し、「直ちに平穏を取り戻す措置をとるよう双方に求める」と訴えている。

◆このようなパレスチナ問題の調停は元来、アメリカではなく国連がやらなければならない。国連のオスロ合意に基づく2国の共存の合意以後、さらなる解決の進展を協議すべきであった。パレスチナ人は556万人である。西岸地区には約120万人、ガザ地区には59万人の人口である。ヨルダンに107万人、レバノンに33万人、シリアに31万人の難民がいる。その他の国に、200万人余りいることになる。しかも、ガザ地区の避難地区は劣悪な状況である。貧困、住居環境の悪さは新たな戦闘、テロの下地となる。

❖国連の対策チームが、積極的な活動をして世界平和につなげるべきである。

1993年のオスロ合意から30年になる。イスラエル・ラビン首相とPLOのアラファト議長の間で同意された。しかし、ユダヤ人の西岸地区への入植活動が続き、武力闘争も後を絶たない。両国の関係は正常化されていない。再検討と国連によるPKOが望まれる。

■ シリアでは内戦が続いている。2011年のアラブの春から始まり、現在までづいている。イスラム国の支配地はほぼ制圧されたが、アメリカの支援を受けている反体制派などがシリア政府軍と戦闘を続けている。これまでの戦死者は、1万1000人以上で、難民は400万人を超えている。

国連はほとんど機能していない。国連シリア監視団UNSMIS(300人)が2012年4月に設置された効果をあげていない。戦闘地域の治安維持のためには小さすぎるだけでなく、和平に向けた国連の関与もない。2012年当時、ロシアのラブロフ外相が高官級の「連絡調整グループ」会合を提案したが、停戦に向けた進展はない。

❖ 世界は紛争にあふれている。その火種が大量の悲惨な状況につながっている。国連の強力な梃入れを検討すべきではないだろうか。国連の治安維持局の改造・強化が重要である。しかも、委員会を設定するとか、調停の条件を確立するなど、調停の原則を確立する必要がある。

■ 2013年、シリアは化学兵器を使用した。国連は緊急会合を開き、化学兵器全廃に向けた決議を採択した。化学兵器は、19世紀に英仏独で研究が進み、第一次世界大戦で双方の陣営で投入された。50万人以上の兵士が犠牲になった。1925年化学兵器の使用を禁じる「ジュネーブ議定書」が採択された。しかし、米軍がベトナム戦争で使用し、ソ連軍がアフガニスタンで、イラク軍がクルド人虐殺で使用している。97年発効の化学兵器禁止条約(CWC)、査察機関OPCWができている。2013年10月、OPCWがシリアの関連施設を査察し、廃棄に向けた作業を行った。一歩前進である。

■ 国連総会は、毎年9月中旬に開会する。193の加盟国の代表が演説する。15分程度である。安全保障理事会は国連の機関の中でももっと重要な機関である。しかし、拒否権のために再三機能を停止してきた。国連憲章27条には「紛争当事国は投票を棄権しなければならない」とある。ノルウェーの国連大使は、22年2月25日の安保理で、ロシアへの非難決議にロシアは棄権すべきだったと批判した。また、23条の常任理事国として「中華民国」「ソヴィエト社会主義共和国連邦」と記載したままである。第二次世界大戦の戦勝国が世界秩序を守るという体制は形式においても実質においても時代遅れとなっている。国連憲章の改訂を伴う国連改革が必須である。

◇ 国連憲章の前文では「われわれは一生のうちに、二度まで言語を絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から、将来の世代を救う」という決意を述べている。第一条で、国連の目的は「国際平和と安全を維持すること」を掲げている。

❖ この目的=国際平和が国連にとって何よりも優先すべき課題である。常任理事国という制度自体が時代遅れであるということを改革する必要がある。国連改革には次のような点を考慮する必要がある。①国家という外交的な手法に、平和の主体となるべき市民社会的要素を加えて組織しなおす必要がある。②国家主権という原理と、大国という矛盾を超えて、国連は行動できるようにすることが必要である。各国の国家主権は認めながら、その主権はそれぞれの国家に限定し、尊重される。そして、国連は国連独自の原則に基づく行動するという制約とともに国家主権を超える要素を加味してもいいのではないだろうか。

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【卵の会 活動ニュース】

❖ 国連改革に関わる請願活動、その署名活動、講演活動、学習会、メールマガジンの発信の日程を検討したいと思います。

❖ 国連改革会合を多方面に呼びかけたいと思います。

                                

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