未承認国家問題・国家を創設することの意義

国連改革 NGO 卵の会 メールマガジン  第16号   2023.2.27

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国家がないとそこに住む人は悲惨な状態になる。ソマリアやブルキナファソなど紛争が絶えない。今日でも国家が市民社会に根差さず、武力で作られている。ミャンマーやアフガニスタンなどで私たちは目の前にみている。既にある国家の中で、ある一定の地域が国家の一部であったり、国家と対立し、独立を望んだりすることもある。台湾や新疆ウイグル、クルド人の地区などがその例といえる。大きな帝国が崩壊した後、民族紛争が絶えない地域がある。セルビア、クロアチア、ボスニア、コソボなどがそうであった。また、ジョージアの南オセチアやアブハジアなどである。ウクライナのクリミアや沿ドニエストル、ルガンスク、ドネツクなどがウ<クライナ戦争の火種となった。

国連は国家創設、国家承認の手続きや条件を国連の規約として作ることが急務である。

*今回第16号は<未承認国家問題・国家を創設することの意義>というテーマです。

■世界の現状とニュース ◆テーマの解説・考察 ◇歴史的考察 ❖卵の会の主張

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◆「武力による現状変更は許されない。」と日本政府は訴える。しかし、歴史は武力によってつくられてきたのが現実である。国家は、武力によってつくられてきたし、今も変わらない。ただ、国連ができて、国連憲章の下、武力行使は否定されている。しかし、同時に武力は拡大する一方で、どの国も武力で国家を守ろうとしている。法律と言論は無力である。しかし、今、武力によらない国家創設の在り方を条約として提示するべき時ではないだろうか。人類は、戦争の危機を目前にして、まだ、その歩みを始めていないのである。制裁で撤退を促そうとしているが、効果は望めない。審議委員会を組織し、和平への努力が必要である。

 

◆ 2014年のことである。ロシアがクリミアに侵攻し、クリミア半島でロシアへの編入の是非を問う住民投票を実施した。米政府はそのことを制裁の対象とした。EU、日本と連携して制裁を課すという方針をとった。ロシアは安全保障会議を招集した。住民投票や選挙が国家の政策に絡んでいるという可能性があると紛争の一因となる。

昨年、ロシアは東南部4州で住民投票を行った。2014年のクリミアの場合も、昨年のウクライナ東部4州の場合も、国連が関与する必要があるのではないだろうか。 さらに、武力侵攻によって解決しようという行為を終わらせるということを国連は真剣に考える必要がある。22年2月24日に始まったウクライナ戦争も和平案を作成すべきである。ロシアも、ウクライナも、NATOとその友好国も、武力行使を支持している。国連も和平への努力をすることなく、不可能という声明を出してしまっている。

■ ミャンマーで、21年に軍によるクーデターが起きて2年になる。今年2月2日、ミャンマー軍は37の軍区(ミャンマー全土で330の軍区がある)で戒厳令を発令した。2月1日に非常事態の6か月延長を発表し、民主派勢力の壊滅に追い込むという意志を鮮明にしている。

       

北西部ザガイン地域、西部チン州、東部カヤ州などで25%の軍区で発令されている。国民防衛隊(PDF)が少数民族の武装勢力から武器や訓練などの援助を受けている。

ミャンマー国軍は民間人の銃所持を許可する通達を出した。退役軍人など国軍に近い層の武器所持を認め、民主派に対抗する狙いがある。自動小銃や機関銃も保有できる。武器は治安を悪化させる。国家が不安定になると武器がはびこる。

❖ 武器保有はアメリカ、南アフリカ、フィリピンなどで認められているが、市民社会には銃は不要であり、廃棄すべきである。国連は、武器廃棄の条約を策定すべきである。

❖ 国連総会は2021年6月18日、国軍の市民に対する暴力を非難し、ミャンマーへの武器の流入を防ぐことを求める決議を採択した。しかし、法的拘束力はない。国連の在り方自体の改革が必要である。市民の武器保有の禁止や武器輸入に関しては強制力を持つ必要がある。法的拘束力以上に、国連が実施の強制力を与えるよう改革すべきではないだろうか。強制力を持つために国連軍の創設が望まれる可能性もある。

■ミャンマー軍に対抗する民主派の「挙国一致政府(NUG)」が、米国やEU諸国などに接触している。NUGで外相を務めるジンマーアウン氏が、今月2023年2月、クレバリー英外相、シャーマン米国務副長官と相次いて会談している。22年12月にEUの欧州連合のサンニーの対外活動兆事務総長ともすでに会談している。NUGはアウンサンスーチー氏が率いた国民民主連盟(NLD)の議員や活動家が21年4月に発足させた。今年、2月13日ワシントンに代表事務所を開設している。マレーシアやインドネシアもNUGに対し前向きである。

❖ NUGが国家創設に平和なやり方で達成することを期待したい。今後の国家創設の武力によらないやり方の先例を作ることができれば、国連の改革にもいい範を示せることになる。期待したい。

◆日本が承認していない国家には、北朝鮮、パレスチナ、台湾がある。そのうち北朝鮮は国連加盟国であるが、日本は承認していない。

◆サブ・ネーションという概念がある。少数派民族問題である。旧ソ連の中には多くのサブネ・ネイションがある。チェチェン共和国もサブ・ネイションと言える。ウクライナの沿ドニエステルやクリミアも、そしてジョージアのアブハジア共和国、南オセチア共和国なども、サブ・ネイションに入ると言える。しかし、これらの国は独立宣言もしており、政府がある場合もある。サブ・ネーションを国家とすれば約6500にのぼる。しかも、これらは紛争の原因になっていることが多く、国連はこの点でも国家に関する条約もしくは規約を策定しなければならない。国連の大きな使命の一つである。「国家創設規約」と名づけておこう。それが作られ機能するまで、多くの国の紛争や戦争は治まらないのではないだろうか。

■メルマガ15号で取り上げたパレスチナの問題も、国家創設にかかわる問題である。国連は長年、パレスチナーイスラエルの和平に努力してきた。しかし、パレスチナ-イスラエルの問題は大きな課題を抱えたままであると言える。解決していない証拠として、去年も今年になってからも戦闘が発生している。21年5月14日、西岸地区で抗議するパレスチナ人がイスラエルの部隊と衝突した。ガザ地区からはハマスがロケット弾を発射し、イスラエル軍が空爆する交戦が5月10日から始まっている。イスラエル軍は合計2500発のロケット弾を発射した。両軍と市民に死者が出ている。15日、イスラエル軍はガザに空爆を続けている。国連は根本的な解決に乗り出す必要がある。ヨルダンをはじめとしたパレスチナ難民の問題も解決していない。

■イスラエルとUAE、バーレーンとは国交を樹立する「アブラハム合意」を20年9月に交わしている。トランプ米大統領の外交による。その後、2年半になる。UAEの首都アブダビ近郊にイスラエル製の「バラク8」システムが展開している。インドと共同開発した兵器で、ミサイルや無人機を迎撃しようとしている。イランに対抗するためである。アブダビにイエメンの新イラン武装組織フーシ派が協力する。イスラエル対イランの対抗軸ができている。今やすべてのアラブ諸国が反イスラエルである時代は終わったと言えるだろう。しかし、パレスチナ問題は一向に解決していない。

 

イスラエル=UAE・バーレーン   ⇔    イラン イエメンのフーシ派

             

インド

 

モロッコ

スーダン

◇ <ナクバ(破局)>

1948年、イスラエルの建国宣言を受けて第1次中東戦争が勃発した。70万人以上のパレスチナ人が故郷と家を失った。これを、パレスチナでは「ナクバ」と呼んでいる。当初70万人だった難民は、避難先で三世代、四世代目となり、 今や約560万人に達している。パレスチナ難民は、1947年の「国連パレスチナ分割決議」に端を発して生まれた。

■ 国家を持たない民族の最大のものは、クルド人である。クルド語を話し、3000万人の人口を持つ。トルコ、シリア、イラク、イランに居住している。トルコ政府はクルド人武装勢力をテロ組織として敵視している。昨年2022年11月13日もトルコ最大都市イスタンブールで爆破攻撃があり、6人が死亡している。爆弾を置いたとみられる女のほか、46人を警察は拘束した。クルド人労働者党(PKK)の工作員と見られている。アメリカがクルド人武装勢力に協力しているとしてトルコのソイル外相は非難している。「テロ攻撃はテロを支援する国々が存在するために起きている」と非難している。北欧2カ国スェーデン、フィンランドはPKKの活動家をかくまっているとしている。2016年からトルコ政府はクルド系武装勢力の掃討を目的としにシリアに越境軍事作戦を繰り返してきた。1980年代から分離独立を求めるPKKと政府の激しい戦闘が相次ぎ、死者数は4万人を超えたとされる。

トルコ南部の大地震で、5万人以上が命を落とし、多くの被災者を出した。被災の救済にクルド人居住区はほかの地域ほどの支援が届いていない。クルド人への差別政策が強いというトルコ政府への批判が出ている。

❖背景には、クルド人の独立という問題がある。国家創設に関連して、国連で委員会を創設し、平和解決にあたる必要がある。

❖ 国連憲章には国家創設に関する規定がない。それは国連の大きな欠陥と言える。国家が軍事力によってつくられてきたという歴史を振り返る必要がある。国際法や国連憲章の精神と相反する事態になってしまっている。武力が国家の成立と領土を確定しているということがあるから、国家は武力侵攻に頼る。ロシアは軍事侵攻に踏み切り、ウクライナも軍事力に依存して戦争する。

◇ ウクライナ戦争の原因の一つが、民族の独立の問題がある。ウクライナは統一国家としての国家主権を伴う独立宣言が、1991年8月24日である。しかも統一にロシア系住民の問題があったことが紛争を発生させてきた。2014年のクリミア戦争が起こり、その後のウクライナ戦争の一因となっている。そしてモルドバとジョージアは、EU加盟を巡って「連合協定」の締結に賛否があった。ウクライナのヤヌコビッチ政権はEUとの連携協定を見送り、政権崩壊につながった。また、ウクライナとモルドバの国境地域の沿ドニエストル地域ではロシアへの編入を求める動きがあり、独立を宣言したという経緯もある。

❖ 重要なことは、解決のために協定や調停委員会を作り国連が関与することである。そして、そこに国連治安維持PKOを創設していれば、ウクライナ戦争を避けることはできたはずである。その際も、国家とは何か。国家創設の要件を審議する必要があり、国連は国家創設規約や国連憲章の改訂に向けた動きは必須である。

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